国内

いまや珍しくない「特殊詐欺家族」 身内が巻き込まれる事情

家族や親族が力を合わせるのは良いことなのだが…

 2018年カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した『万引き家族』(是枝裕和監督)での、犯罪によってつながる家族のあり方に衝撃を受けつつも、これはフィクションの世界の話で、現実ではないと考えていた人が多いはずだ。ところが近年は、特殊詐欺の分野で、家族ぐるみの犯行が露見して逮捕されるケースが目立つ。ライターの森鷹久氏が、近年になって目立つ「特殊詐欺家族」の様子をレポートする。

 * * *
「万引き家族」ならぬ「特殊詐欺家族」がいた──。

「父親の宮腰和夫と母親・春美、その娘の計三人が特殊詐欺に関わっていたとみられます。長野県内に住む和夫の父は、和夫のギャンブルで一家の家計がひっ迫していた、と話しています。和夫はATMなどを使って特殊詐欺グループの口座から金を引き出す”出し子”を、母と娘は父が引き出した現金をコインロッカーなどに出し入れしたりする”運び屋”をやっていたそうです」

 驚きを隠せない様子でこう話すのは、全国紙の警視庁担当記者。ちなみに、この家族には他にも子供がいたが、犯行には加わっていないと見られている。とはいえ驚くべき「家族ぐるみ」での特殊詐欺事件だ。こんな家族は特別なのだと思いたいところだが、実は他にも起きていた。

 上記の家族が逮捕される少し前、息子が2017年10月に特殊詐欺によってだまし取った400万円を受け取ったとして、宮崎県の女が組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)の疑いで逮捕されていたのである。前出の記者が続ける。

「息子が逮捕され、カネの流れを調べる突き上げ捜査で発覚したようです。母親は“どんなカネか知らない”と言っていたようですが、確かに見極めは難しい。仮に気が付いていたとしても、自分を守るためだけでなく、かわいい息子のためにシラ切るでしょう」(全国紙記者)

 突き上げ捜査とは、組織邸に行われる犯罪について、逮捕した末端メンバーを追求することで全貌をつかむ捜査方法のこと。組織全体を摘発するための方法としてよくあるやり方だが、取り調べが苛烈になりやすいことでも知られている。その突き上げ捜査の一環として取り調べられたにもかかわらず、母親は「知らない」という証言を崩さなかったのだ。

 特殊詐欺に子供が手を染めていると気づきつつも、一言も漏らさない親の気持ちに、近隣住民も同情的になりやすい。たとえば2015年、東京都内在住の男・Xが特殊詐欺事件で逮捕された事件でも、九州地方にあるXの実家と家族ぐるみの付き合いがあったという男性・Aさんは、当時の状況を次のように振り返る。

「Xは不良だったけど、東京で成功したんだと母親が周囲に自慢しとったですね。一家は母親と祖母、そしてXの三人暮らし。父親が経営していた会社を倒産させてしまい、数千万円の借金を残して自殺したのが、Xが中学生の時やったです。Xはそんな家族を助けるために、詐欺をしていたんでしょう。月に三~四回は帰省して、祖母の介護までしていたし、小さい自宅も母親のために建ててあげた。

 格好が派手だったから“変なことしよるんやろ”なんて噂してましたけど、私らにも“昔はやんちゃで迷惑かけてスンマセン”と土産もって来たり…憎めん奴だったとです。お母さんも途中からはさすがに気が付いていたらしいけど、祖母の体調も悪かったし、息子に頼るしかなかったとでしょう」(Aさん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン