「復活」という言葉は、スポーツ選手ならば数字に明確に現れやすいが、芸能人の場合どこか曖昧な意味になっている。『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)の著者で、21年間にわたって田原俊彦のライブに足を運び続けている芸能研究家の岡野誠氏が、田原を例に“芸能人の復活”とは何かを考える。
* * *
タレントならテレビ出演の再増加、歌手ならもう一度ヒット曲を生み出すこと──。芸能人の復活は、そう定義できるかもしれない。だが、数字では現せない本人の変化で、復活を読み解くこともできる。
田原俊彦は1980年6月21日『哀愁でいと』で歌手デビュー以来、『ハッとして!Good』『抱きしめてTONIGHT』などのヒット曲を生んできた。1994年のジャニーズ事務所独立以降、新曲の売上枚数は低迷し、歌番組で披露する機会も激減。そんな長期間に渡る苦境を経て、2011年に『爆報!THEフライデー』(TBS系)のスペシャルMCに就任。テレビのレギュラーを持ち、番組も高視聴率を続けていることで、“復活”と記されることもある。
メディア出演の増加という表面的な変化だけではなく、ライブのパフォーマンスにおいて2000年代と2010年代の田原は明らかな違いを見せている。
40代に突入した2000年代、オリジナルの振付を省く場面が増えてきていた。年齢を重ねる男に20代と同じように踊れというのは土台無理な話である。本人にしかわからない身体のコンディションもある。徐々に簡略化されるのは仕方ないことだった。
それでも、ファンは常に全盛期の姿を求めて、会場に足を運ぶ。期待値が高いからこそ、私は「田原俊彦はもっと動けるはずだ」と不満を抱えていた。