IT系企業の役員をしている32歳のタカはアメリカに4~5年住んでいた経験があり、なにかにつけて端々が英語になる男だった。
ペットボトルから水をこぼせば「ウップス」、
誰かがクシャミをすれば「ブレスユー」、
自分がクシャミをしたら「キューズミー」……。
どこかそこには不自然さがあり、ナルシストっぽい空気が漂っていた。
高身長でイケメン、英語堪能、収入は明かさないものの住まいは赤坂の高級マンション、車はBMWの5シリーズ。このスペックだから、多少ナルシストっぽくても女性には困らない。
彼と夏から付き合い始め、すぐ彼の家での半同棲状態になった後輩港区女子のリカは、この10月に一度だけ、夜中3時に帰宅した。友達の誕生日祝いをしていたからである。事前に彼にも伝えておいたはずだった。
そんなリカに、起きてきたタカは「crap」と言い放ったという。
「クラップ?」
「彼氏の家に住んでおいてこんな時間まで飲み歩いて、ゴミだな」
crapは“クソ”というような意味のスラングだ。2人はそこからケンカになり、リカは「別れたいわけ?」と突きつけた。
すると彼は、「up to you(君次第)」。2人は破局した。
このような「君次第」というのは、多くのハイスペイケメンの常套句だ。
外資系金融に務める高橋一生似のユウタと付き合っていたマミは、ユウタにこんな元カノの愚痴を聞かされた。
「元カノ年上でさ、32歳だったんだけど。避妊はいらないとか、圧がすごくて、ひくんだよね」
「え? じゃあ結婚願望ないの? 私も再来年には30になるんだよ」──そう聞くマミに、「んー、まあ、マミ次第かな? マミが俺をその気にさせてくれたら。結婚しても自由にさせてくれるとかさ」と笑顔で答えた。マミはまもなく、ユウタからフェードアウトした。
ハイスペ×イケメンの強力な組み合わせを持つ彼らは、次から次へと女性が寄ってくるからか、女に合わせる思考はないらしい。上から目線で「君次第」と責任転嫁するフレーズは、今日も別の女に繰り返されるのだ。
◆取材・文/吉川リサコ(コラムニスト/現役港区女子)