“尿漏れ”を初めて経験する精神的ダメージは大きいと経験者は口を揃えるが、まさかその先に「認知症」につながるリスクがあるとまで考える人は少ないだろう。
「昨年の冬から尿漏れに悩んでいます。寒さが厳しくなった頃に、外に出て寒いと思った瞬間に“チョロッ”となったのが最初でした。以来、尿意が我慢できずに、ズボンにシミがつくことも増えた。家族や友達に見られるのも恥ずかしくて、もう本当にショックです」
そう語るのは、都内在住の武藤博行さん(仮名、65)。退職後、趣味の旅行や山登りを楽しんできた武藤さんだったが、尿漏れをきっかけに外出をするのが億劫になってしまったという。
そのように生活が“内向的”になると、「認知症」にまでつながってしまうことがある。東京都リハビリテーション病院副院長の鈴木康之医師(泌尿器科)が語る。
「尿漏れをきっかけに塞ぎ込んでしまい、生きる気力まで失ってしまうケースが散見されます。こうしたうつ的な状態は、認知症の要因となる可能性があります。
普段の生活や仕事上の支障になるのであれば、オムツや下着にとりつける尿吸収パッドなどを利用したほうがいい。また、介護上の理由でオムツが欠かせない人も、頼り切るのではなくて、外せるなら外して自力で排尿することが大切です」