2018年6月現在、在日中国人の総数は74万人。うち不法滞在者は9500人ほどとされ、彼らの大部分が「黒工」(ヘイゴン)と呼ばれる不法就労者となっている。もっとも日中間の経済格差が縮小した昨今、当初から不法就労を目的に来日する中国人はほとんどいない。黒工たちの多くは、劣悪な労働環境や低賃金が指摘されている外国人技能実習生が就業先から逃亡したパターンか、留学生がオーバーステイしたパターンである。日本人の目には決して見えてこない、在日中国人社会の最末端にうごめく人々の姿をルポライター・安田峰俊氏がお伝えする。
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現代の中国人黒工たちのライフラインは、QQや微信(ウィー・チャット)などのスマホを用いたチャットアプリだ。実際にこれらの黒工コミュや技能実習生コミュを覗くと、怪しげな情報の洪水に圧倒される。
「千葉、マンション内マッサージ店、38歳以下女性募集、ビザの有無こだわらず」
「工事現場【長期】東京周辺、黒工も問題なし、日給1万~1.8万円」
「愛知県刈谷、台湾料理店の従業員募集、黒工もニセ在留カードがあればOK」
ほかに多く見られる投稿は、携帯電話や住居賃貸の契約のヤミ代行、免許証や保険証・在留カード(在日外国人の事実上の身分証明書)など偽造身分証の販売、日本円と人民元の個人両替や中国人向けヤミ金の情報などである。
黒工の求人は、中華料理店などが直接出す例のほか、留学生や中国人妻が副業として仲介ビジネスをおこなう例も多い。