歴史好きの間で、自分のルーツを探りたい人が増えている。そんな中で、じわじわと関心が高まっている「名字」。日本には名字が10万種類あるとされるが、名字にはあると言われながら、実は存在しないものもあるのだとか。姓氏研究家の森岡浩さんはこう語る。
「ネットでは十二月一日と書いて“しわす”と読むなどと出ていますが、これは実在しません。そのほか、前回のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』の主人公の名前“楡野”も私が知る範囲では見たことがない名字です。小説や漫画、ドラマなどで使われた名字は、そのまま実在すると信じられることがありますが、架空のものであることも多いです」
さらに、名字に込められた思いもある。
金足農業高校の吉田輝星投手(17才)のように、“吉”がつく名字は、「吉に恵まれますように」という意味が込められている。
「吉田さんの場合は“いい田んぼに恵まれますように”という農家の人たちの願いが名字に込められていると思います」
また、こんな疑問も。さいとうさんの“さい”は斉、斎、齊、齋など種類はさまざま。
「これは明治時代に戸籍ができて名前を登録する際、ほとんどの人が書き間違いをしたから起こったこと。昔は、ひらがなの読み書きができても、漢字を知らない人が多くいました。そこで、正しい“斎”の字をまねて書いたつもりで書類を提出。役所から“この斉藤でいいですか?”と聞かれても、正しいかどうか判断できないまま登録するケースが多かったんです。わたなべさんの“辺”も同じ。渡邉が正しい。渡辺は略字です」
※女性セブン2018年11月29日・12月6日号