元外務省主任分析官の佐藤優氏と、『ゴルゴ13』作者さいとう・たかを氏が、「ゴルゴ(通称G)のインテリジェンス」を語り合う短期集中連載の第5回。ゴルゴと2人の仕事に共通する、「チームマネジメント」と「ひとりの決断」のバランスの取り方とは?
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さいとう:『ゴルゴ13』を50年以上も休まずに続けてこられたのは「チーム」でやっていた、というのも大きいでしょうね。
佐藤:ビッグコミックの連載に目を通すと、作品の最後に「制作スタッフ」が紹介されています。そこには、構成、構図、脚本、作画……と10人以上の名前が並んでいます。
さいとう:この世界に入る時に「絶対にひとりではできない」と思っていたんです。
佐藤:なぜですか? たいていの漫画家さんは、アシスタントはつけますが、基本的にはひとりですよね?
さいとう:ドラマを考える才能と絵を描く才能というのは、まったく別の才能でしょ。
佐藤:たしかにそうです。
さいとう:チャップリンのような天才は別ですよ。彼は映画の監督、脚本、主演……と全部ひとりでやった。でもそのあと、チャップリン2世は現れましたか? いまの漫画界のシステムは、ひとりの作家に「チャップリンになれ!」と言っているようなものです。手塚治虫ならばできたかもしれませんが、彼も天才。天才の出現を待っていたのでは、業界が先細ってしまう。
佐藤:チームで作品を作る利点は、作業の問題だけでなく、新陳代謝ができることも大きいと思うんです。スタッフは入れ替わりがあると思いますので、スタッフがひとり入れ替わるたびに、新しい風が入ってくる。自然と時代の空気を取り込むことができます。それに『ゴルゴ13』では、外部の人材の脚本も採用していますから、古びるということがありません。