ドラマでは、役者の演技だけではなく、その髪の色に注目が集まることもあるようだ。今期のドラマで脚光を浴びるふたりの“白髪俳優”の注目ポイントと“白髪”の効果について、コラムニストのペリー荻野さんが綴る。
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今シーズンのドラマでは、ふたりの「白髪」が輝いている。ひとりは『昭和元禄落語心中』(NHK)の岡田将生。昭和の噺家・八雲を演じているが、その端正な姿と本格的な語りの技は、落語ファンをうならせている。
このドラマでは、若いころから、晩年、名人と言われるころまで幅広く描かれるため、岡田は新人時代(髪はふさふさで真っ黒)から、白髪の老人姿に。二枚目は「老け」を作り込まずに老人役をすることも多いが、岡田将生は29歳の若さで堂々の老け姿。渋くキメた分、イケメンぶりが強調された気もする。
もうひとりはご存知、『下町ロケット』(TBS系)の財前部長こと吉川晃司。かつて主人公・佃(阿部寛)が営む小さなメーカーの技術を高く評価し、守ってくれた財前は、今期の「ヤタガラス編」では無人トラクターの開発に取り組み、自分が所属する大企業「帝国重工」と下請け企業との間にはさまれて苦しい立場に。それでも「日本の農業を救うため、なんとかお願いできないでしょうか」と佃に頭を下げる。
その頭髪は見事な白髪。銀色に輝いて見える。カッコいいのである。そういえば、財前は佃に誘われて稲刈りに言った時にも、スーツ姿だった。いつでもどこでもジェントルメン。白髪の紳士である。
『モニカ』時代、マイクを振り回し、ついでに長い足も振り回していた(※ペリー個人のイメージです)吉川晃司を知る世代から見ると、すっかり落ち着いた様子にしみじみとしたものを感じる。財前の白髪には、「暴れ吉川記憶世代」を惹きつける意図もあったはずだ。
昔から、「ロマンスグレー」という言葉があり、ナイスな白髪まじりヘアスタイルの男性は称えられてきた。私がお会いした中で、これぞまさにロマンスグレーな人だと思ったのは、故・児玉清さんである。ここで重要なのは、ただの「グレー」ではなく、「ロマンス」がついていること。「ロマンス」って、いったいどうやって出すんでしょうか?
『下町ロケット』では、財前に圧力をかける帝国重工次期社長候補・的場(神田正輝)も佃らを「下請けが」と見下して嫌な顔を見せる的場派の奥沢(福澤朗)も、帝国重工を恨み、先んじて無人トラクターを実用化した佃のライバル企業社長の重田(古館伊知郎)も、白髪率は1割程度。佃らが開発競争の中でどう生き残っていくのかも大事だが、帝国重工周辺に限ってみれば、白髪財前VS黒髪男たちの対立の構図もポイントだ。オセロか。
キャラの強さとわかりやすさは、「日曜劇場」企業ドラマの鉄則。財前が白髪でなかったら、これほどわかりやすくはならなかった。
これだけ白髪紳士の印象が強くなると、吉川としても今後、黒髪に染めたりしては違和感を持たれるだろう。こうなったら、白髪を続け、そこに「ロマンス」が加わり、ロマンスグレーを超えるロマンス白髪になったらいい。人生百年時代といわれる日本では、ロマンス白髪俳優が主役になるドラマももっと増えるはずだ。