親が高齢になると、医療、特に薬が一気に身近になる。ここ数年、高齢者のポリファーマシー(多くの薬を併用している状態)が問題とされているが、そうは言っても受診した医師の指示や処方に異を唱えるのは難しい。
「そんな“医療と薬を人任せ”がこれからは命取りになります」と断言するのは、女性の健康支援を掲げる薬剤師、宮原富士子さん。超高齢社会で健康で自分らしく生きるためにも、医療や薬とのつきあい方を生活の中で見直すべきときだと言う。薬は病気を治療したり、症状を緩和したりするもの。
しかし、高齢になると腎臓や肝臓の機能が低下して薬が効きすぎたり、副作用のために別の薬が追加され、数が増えてしまうことがあるという。こんな事例がある。
10年前に夫と死別して以来不眠になり、睡眠薬を処方されているSさん(74才)は3年前に認知症を発症し、現在はケアハウスで暮らしている。
「寂しさからか頻繁に睡眠薬を服用するようになり、もうろうとした状態で親戚や友人に電話をかけまくって迷惑をかけています。睡眠薬を求めて、精神科と整形外科で二重に睡眠薬をもらっていたこともわかり、今は整形外科の先生に、絶対に睡眠薬を出さないようにお願いしています」(Sさんの娘さん)
また、介護老人保健施設に入居中のCさん(75才)は10年ほど前にパーキンソン病と若年性認知症と診断された。
「診断当時からパーキンソン病治療薬はずっと処方され続け、そのほか認知症治療薬、下剤、睡眠薬などいろいろな薬を常時7種類は服用していました。特に睡眠薬は徐々に本人が強く要求するようになり、施設の人を辟易とさせるほど。最近、人が変わったように暴言を吐くようになり、施設外の病院で検査をし直すと、なんとパーキンソン病ではないことが判明。暴言などは薬の副作用が疑われたため、処方薬を整理して3種類にしました」(Cさんの娘さん)
いずれも症状をよくするために処方された“救い”であるはずの薬が、生活を脅かすことになってしまっている。
多くの高齢者に薬の指導を行う宮原さんはこう語る。
「一見、“高齢だから”と見過ごされがちな症状が、処方された薬の副作用だったということはよくあります。たとえば睡眠薬は高齢者にはよく処方されますが、もうろうとして転倒するリスクが大。依存しやすく、なかなかやめられないのも注意点です。
また生活習慣病などの治療薬が、漫然と処方され続けることも少なくありません。薬には副作用があり、高齢者には大きな影響が出る場合もあります。なんとなく“のんでおいた方が安心”といった見方は危険です」
※女性セブン2018年12月13日号