芸能

ビートたけしが語る「高齢者ボランティアの落とし穴」

高齢者の安易なボランティア参加に警鐘を鳴らすビートたけし氏

 今年8月、大分県在住のボランティア・尾畠春夫さん(78)が山口県内で行方不明となった2歳児を発見し、「スーパーボランティア」として一躍、時の人となった。しかし、11月30日に著作『「さみしさ」の研究』(小学館新書)を発売したビートたけし氏は、増加するボランティア高齢者に対して「冷静な目を持て」と指摘する。

  * * *

 こないだ、老人の「希望の星」として一気にメディアの主役となっていたのが、78歳のスーパーボランティア・尾畠春夫さんだよな。山口県の周防大島で2歳の男の子が行方不明になって、警察や消防が3日間探しても見つからなかったのを、たった30分で発見しちゃったってすごいジイサンなんだけどさ。

 この人はボランティアのエキスパートで、熊本地震や西日本豪雨みたいな災害が起きるたびにボランティアに行ってて、その世界じゃ名の知られた人なんだってさ。周防大島で大活躍できたのも、過去に大分で行方不明の2歳児を探したことがあったからでさ。その経験から「子供は高いところに登る習性がある」って感じていて、いなくなった現場から500メートル以上離れた山の中で見つけ出したんだよな。

 尾畠さんは素晴らしいんだけど、滑稽なことにその活躍を見て、最近じゃ災害や事件の現場に「何か手伝えることはないか」って駆けつける変なジジイやババアが殺到しているらしい。で、現場で逆に他人に迷惑をかけることになって「何しに来たんだ」って話も増えているんだって。「モンスターボランティア」なんて呼ばれてるタチの悪いのもいるって聞くぜ。

 オイラは「自己客観視できない老人ほど見苦しいものはない」と思っている。まさにこの高齢ボランティアの急増ってのは、いかに自分を引いた目で見ることができない人間が多いかを物語っている。

 尾畠さんは、報道で知る限り徹底した「鍛錬の人」だ。あの歳になっても、毎朝8キロ走をやって体力を維持してるなんてニュースもあった。人のためになることをする人間、何事かを為す人間ってのは、当然のようにそれなりの努力や準備をしている。特に老人になってもそうあり続けようとするなら、なおさら大変だ。それに、自分の適性というのを見極めて「自分がその現場に行ったら何ができるか」を見越した上で動いてるんだろう。

 ふと思いつきでボランティアに手を出して、「自分も何かやって褒められたい」「人助けをしていい気持ちになりたい」と考えてるようなヤツとは覚悟も気構えも違う。なかでも一番違うのが、自分が役に立つのか立たないのか、冷静に判断できる力なんだよな。

 もちろんボランティアをしようという志は素晴らしいけど、その点は冷めた目を持ってなきゃいけない。

 ※ビートたけし・著/『「さみしさ」の研究』(小学館新書)より

 

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン