ドラマに登場する銭湯の女湯や入浴シーンは、時代ともにどのように変わったのか。コラムニストのペリー荻野さんが考察する。
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今年亡くなった樹木希林さんの代表作のひとつ『時間ですよ』シリーズが、BS12 トゥエルビで再放送中だ。このドラマを改めて見て驚くのは、実におおらかに女性の裸が出てくること。樹木希林さん(当時の芸名は悠木千帆)演じる浜さんは銭湯「松の湯」で、人のいい主人(船越英二)、おかみさん(森光子)、歴代お手伝いさん(3代目は浅田美代子)、従業員の健(堺正章)と働いている。話の舞台が銭湯だから、脱衣所でお客が裸になるのは当たり前なのだが、あっちでもこっちでも胸もあらわな女性客がいて、話したり笑ったり。体は映っているのに顔はほとんどわからない人も多いのだ。
もちろん話題作りのためのヌードだとは思うが、お色気よりは生活感があって、ドラマに人間味を添えていた気もする。70年代は、銭湯や入浴シーンで裸はよく出てきた。私は70年スタートの時代劇『大江戸捜査網』(テレビ東京系)を取材した際、シリーズ初期に密かに事件を探索する隠密同心の打ち合わせ場所が銭湯だったので、裸女性のいる女湯セットもあり、「目のやり場がなくて困った」と出演者から聞いたことがある。正義の味方も困惑気味だったのである。なお、このシリーズにも悠木千帆時代の樹木希林さんが出演している。
2時間ドラマには、火野正平らとにこにこ混浴するヌードギャルが話題となった『混浴露天風呂連続殺人』シリーズ(テレビ朝日系)などがあったものの、平成には連続ドラマでは女湯裸シーンほぼ絶滅した。それとは別に話題になったのが、「入浴シーン」だった。『水戸黄門』(TBS系)の入浴クイーンお銀(由美かおる)をはじめ、今年はベッキーも『くノ一忍法帖』(BSジャパン)で毎回入浴。そして、現在はNHK『ぬけまいる~女三人伊勢参り』で、田中麗奈、ともさかりえ、佐藤江梨子が、奮闘中だ。
江戸日本橋の小物問屋の女主お蝶(田中)、フリーターのお以乃(ともさか)、武家に嫁いだお志花(佐藤)がそれぞれの事情から、突然、お伊勢参りの旅に出て、さまざまな事件に遭遇するというお話。3人は、旅の途中、各地で温泉に浸かるのである。風呂で寛ぎ、風呂で泣き、風呂でケンカする。いちいち風呂がからむところが面白い。
田中麗奈は映画『ゲゲゲの鬼太郎』の猫娘、ともさかは『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)の美雪、佐藤江梨子は映画『キューティーハニー』、ナイスな実写版キャラ三人娘も、今やドラマの中で若い娘たちにお金をだまし取られた上に「おばさん」と呼ばれてキーッとなる年ごろなのである。怒ったともさかが娘たちを投げ飛ばすのもマーク宿の風呂の脱衣所にて。このドラマの風呂への徹底したこだわりがここにも出ている。こんなに奮闘しているんだから、もっと三人の入浴シーンについて語る人が増えてもいいのではと思う。
なにしろ、風呂のシーンはセットを用意するのも大がかりで大変なのだ。入浴シーンまでも絶滅したら、ますますドラマから人間味がなくなる気がする。がんばれ、ぬけまいる三人組!!