対話アプリ大手のLINEが、来年にも新銀行を設立すると発表した。事業の内容はまだ明らかになっていないが、スマホを使った少額送金や短期間の少額融資などのモバイル決済サービスを手掛けると見られる。近年、こうしたIT企業や流通など異業種の金融業参入が相次いでいるが、「既存銀行の存在意義はますます薄れていく」と指摘するのは、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏だ。
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11月27日、LINEが、みずほフィナンシャルグループと共同で銀行業に参入すると発表した。その背景には、IT企業の業務拡大の意欲と、もう一つ並々ならぬ銀行の危機感がある。
これまでわが国の金融サービスは、銀行の独壇場となってきた。特に、金融仲介機能や資金決済サービスは、銀行にしか提供できないと思われた時期もあった。その意味では、銀行は殿様商売をしてきたといえるかもしれない。
しかし、ネットワーク・テクノロジーの開発と普及が進み、IT先端企業など非金融の企業が、銀行が一手におさめてきた金融サービスを提供するようになった。その変化を受け銀行業界では、これまでの発想では経営が立ちいかなくなるとの危機感が高まり、IT企業と協業して“レゾンデートル=存在意義”を示そうとする考えが強まっている。
◆銀行を取り巻く経営環境の変化
わが国の経済において、銀行は重要な役割を果たしてきた。預金を集め、それを企業に融資することなどを通して経済の成長に必要な資金を供給してきた。
資金の決済においても銀行は不可欠だった。今のようにキャッシュレス決済(現金を使わずに資金の決済を行うこと)が普及していない中、銀行の決済機能は経済活動を支える重要な要素だった。そのため、第2次世界大戦後の復興期以降のわが国では、「経済は銀行なくして成り立たない」、「銀行がつぶれることはない」という見方は多かった。
ただ、リーマンショック後、銀行を取り巻く環境は急速かつ大きく変化している。特に、仮想通貨の代表格である「ビットコイン」の登場は銀行の経営環境を大きく変化させた。この仮想通貨は、“ブロックチェーン”という分散型のネットワークシステム上で発行と管理が行われる。
ブロックチェーンは特定の管理者(政府や中央銀行)を必要としない。コインの管理は、取引の参加者の相互の監視によって行われる。ビットコインに価値を見いだす人が増え、法定通貨ではなく仮想通貨で経済取引を行うことも増えた。
この取引は、銀行を経由せずに成立する。主にはSNSなどのプラットフォームを経由して決済が行われる。その中で中国のアリババ・ドットコムなどのIT先端企業は、自社のアプリケーションに金融仲介や資金決済などを行うテクノロジーを実装している。アリババが提供するモバイル決済サービスのアリペイは、なんと5億人を超えるユーザーを確保している。
IT技術が新しい発想の実用化を可能にした結果、金融サービスが銀行(金融)以外の業界に浸み出しているのである。