がんを前向きに受け入れる──。健康に自信のあった人ほど、その境地に達するのは難しいはずだ。強靱な体で人生を切り拓いてきたアスリートは、現実をどう受け止め、どう生きているのか。
「病気と闘うというのは、現役時代に死球を受けて“この野郎!”と相手に向かっていくのとは勝手が違う。なにせ、相手が見えないから(笑い)」
そう話すのは、プロ野球の現役時代は中日、日本ハムで主軸として活躍し、プロ通算2204安打を放った大島康徳氏(68)だ。引退後は日本ハムの監督を務めるなどしたが、2016年、66歳の時にステージIVの大腸がん(S状結腸がん)が見つかった。
手術を受け、大腸がんの切除は成功する。ただ、転移していた肝臓のがんは手術できる状態になく、抗がん剤治療が続いている。それでも、大島氏の表情は明るい。
「薬の副作用はつらいけど、先生と相談して投薬のペースを落としてからは、自分のやりたいことができるようになりました」
大島氏は、野球教室や解説の仕事を続けることに強いこだわりがあるという。