中国のネットを騒がせた逮捕劇だが、本人にしてみればスッキリしてよかったのかもしれない。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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間が抜けているというべきか、それとも天然なのか──。2018年10月17日、『新京報』の速報版は、ある指名手配犯に関するニュースを配信したのだが、記事を読んだ人々は、爆笑しつつ、すぐに知人に向けて記事を拡散したという。
中国の人々のツボにはまった指名手配犯の名前は、金。江蘇省出身の40歳、上海で契約詐欺にかかわったグループの一員としてネット上で指名手配されていた。
金は自分が指名手配されているか否か、交番を訪れて尋ねたために御用となった。ご丁寧にも自ら身分証まで提示して確認してもらったという。
聞けば、金も哀れである。というのも金は、詐欺グループの一端を担いながら、自ら詐欺にかかわったという意識を持っていなかったというのだ。要するに、単に利用されていたということだ。
金が杭州市でわざわざ交番を訪ねたのは、上海の警察から頻繁に電話がかかってくることを不審に思ってのことだった。警察からの電話では、ネット上で手配されていることも説明されているのだが、その意味がよくわからなかったため、交番に足を運び、「自分は指名手配されているのでしょうか?」と尋ねたというのだ。
問い合わせを受けた交番では、当然のことながら「はい、されていますよ」となり、すぐ逮捕された。ドリフターズのコント顔負けの事件簿であった。