米国と中国の激しい貿易戦争は、G20での両国首脳会談で対中関税のさらなる引き上げが猶予されたことで“一時休戦”との見方も広がっている。だが、「まだ予断を許さない状況」と指摘するのは、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏だ。両国に再び摩擦が生じれば、日本人の生活にも深刻な影響が出る──。
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12月に入り、米中の貿易戦争が激化する懸念が一段と高まった。それを反映し、12月第1週の日経平均株価は2万1678円まで、前週から3%程度も下落した。近年、わが国の景気は、堅調な米国と中国の需要を取り込んで業績を拡大させてきた。ところが、ここへ来て、頼みの米中の景気の先行きに懸念が出てきた。
今後、両国の貿易戦争が再び激しさを増すと、わが国の景気にマイナスの影響を及ぼすことは避けられない。来年秋には消費税率の再引き上げが予定されていることもあり、われわれの生活にも深刻な影響が出来ることが懸念される。
◆高まる国内企業の業績懸念
12月に入り、わが国企業の業績の予想が大きく悪化している。その最大の原因は、米中貿易戦争の激化を受けて中国経済が想定以上のスピードで減速するとの不安が高まっていることだ。中国経済が減速すると、日本企業の中国向け輸出に陰りが出ることは避けられない。
これまで中国政府は、IT先端技術などを用いて製造業などの競争力の向上を目指してきた。具体的には、ロボットや人工知能(AI)を搭載した制御装置などを用いて、工場の省人化・自動化が進められている。中国国内での半導体の生産能力を強化するために、半導体製造装置への需要も高まった。それを受けて、わが国の企業が生産する産業機械の対中輸出が増加した。
しかし、足元で、貿易戦争への不安から設備投資を先送りする中国企業が急速に増えている。それに伴い、日本企業の中にも業績予想を下方修正する傾向がみられる。
特に注目されるのは、中国で生産されている米アップルのiPhoneなどのデバイスに、トランプ政権が制裁関税をかけるか否かだ。実際に高関税が課されることになると、アップルはiPhoneの販売価格を引き上げなければならなくなるだろう。それは、iPhoneの販売台数を下押しする可能性がある。
そうでなくても、すでにiPhoneの販売は伸び悩んでいる。アップルからiPhoneの生産を委託されている台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は、受注減に直面している。制裁関税の分だけiPhoneの価格が上昇すれば、販売台数はさらに落ち込むだろう。その結果、わが国の企業が手掛けるiPhone向けの部品などの販売も減少する恐れがある。12月第1週の株価下落の背景には、そうした展開を懸念する市場参加者が増えたことがあった。