12月23日に開業60周年を迎える「東京タワー」。東京の中でも有数の観光地となっているが、初めてはとバスのコースに組み込まれたのは1959年のことだった。1962年に入社し、はとバスのガイドを担当していた長谷井由紀子氏が思い出を振り返る。
「何台ものバスで1日に2~3本の運行でしたが、それでも連日満員で、トップシーズンはピストン輸送しなければ追いつかないほどの人気でした。
バスが六本木や芝公園の辺りに通りかかると、大きなタワーの根元が現われ、歓声とともに『上が見えない、上が見えない』と皆様窓に顔をくっつけて見上げていましたね。バスを降りると皆様の驚きは大変なもので、背中をそらしながらタワーを見上げていらっしゃいました」
客層は老若男女幅広かったが、やはり地方出身者が多かったと語る。
「当時は地方から東京に来たらまずは東京タワー、というのが定番でした。ほとんどの中学校、高校の修学旅行に東京タワー観光が組み込まれていたと思います。
展望台に昇る透明のエレベーターに乗るのが初めての方も多かったでしょうし、耳鳴りがする方、高所恐怖症の方などは目を閉じていらっしゃいました。でも降りると、大展望台は総ガラス張りで、東京の街並みを360度見ることができましたので、開放感から一斉に歓声が上がっていました。
とにかく人が多く、大展望台は満員電車のように身動きが取れないほど混み合う日もありました。いつ行ってもエレベーターに乗るまで何時間待ちという長い行列ができていた。それは今でも忘れられませんね」
※週刊ポスト2018年12月21日号