芸能

クイーンの登場で「ロック少女」という概念が日本に誕生

1975年の初来日。女性ファンの勢いはすさまじかった(Ph:Getty Image)

 伝説的ロックバンド・クイーンのボーカリストであるフレディ・マーキュリーの生き様を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒット中だ。観客動員数180万人を記録(12月10日現在)。2016年公開の『シン・ゴジラ』に匹敵する驚異的な数字を叩き出している。

「クイーン」が、メインボーカルのフレディとギタリストのブライアン・メイ、ドラマーのロジャー・テイラー、そしてベーシストのジョン・ディーコンによって結成されたのは、1971年のこと。

 それまでにない独創性に富んだクイーンの出現は、衝撃的であり画期的なものだった。しかし、当初は英国でそうした音楽性に賛否両論が渦巻いたため、アルバムはそれほど売れず、初めから大成功したといえるわけではなかった。クイーンを何度も取材してきた音楽評論家の東郷かおる子さんが語る。

「デビュー当初、薄化粧とフリルの衣装のせいで、すでにデヴィッド・ボウイらが確立していた“グラムロックの残りかす”というような言われ方をされました。つまり、時代遅れの感があったのです」

 むしろ、このバンドの優れた点を当初から評価していたのは、日本のファンだった。

「インターネットがない時代ですから、日本には英国での評価や情報が入ってきませんでした。そして日本で音楽専門誌にクイーンのグラビアが掲載されたところ、今までの筋骨隆々な男たちがシャウトするハードロックとはまるで違って映ったのです」(東郷さん)

 一方の映画・音楽ジャーナリストの宇野維正さんはこんな指摘をする。

「日本でクイーン人気に火がついたきっかけの1つは、少女漫画誌に彼らをモデルとしたキャラクターが出てくるようになったからなんです。それによって少女漫画ファンの文化圏と、洋楽ファンの距離が近くなり、女性人気がさらに高まったのです。

 その頃は男性ロックファンにとっては、あまりにも女性ファンが多いので、近寄りがたい雰囲気さえありました(笑い)」

 クイーン人気の決定打となったのは、シングル『ボヘミアン・ラプソディ』の空前のヒットだ。1975年11月に発売された4枚目のアルバム『オペラ座の夜』からシングルカットされたこの曲は、全英1位、全米4位となり、クイーンの世界的な地位を不動のものとした。映画でも、この曲が創作されるエピソードが丁寧に描かれている。

 初来日は1975年。東郷さんが述懐する。

「羽田空港には2000人近い女性ファンがプラカードを持って押し寄せ、メンバーはあまりに女性ファンが多いことに“違う惑星に降り立ったのかと思った”と、戸惑いを感じたという有名な逸話が残っています。

 武道館公演では失神者が続出したほど。そんなロックバンドはそれまでありませんでした。当時、『ロック少年』という言葉はありましたが、クイーンの登場によって、『ロック少女』という概念が日本に誕生したほどです」

 その後、『伝説のチャンピオン』『バイシクル・レース』などのヒット曲を立て続けに発表し、1970年代を駆け抜けたクイーン。

 1980年代に入ってからは、個々の活動をスタートさせるなど、新たな音楽的アプローチをするようになった。

「映画では、フレディのソロ活動にほかのメンバーが反対したように描かれていますが、事実は違います。メンバーは誰もソロ活動に反対していませんでした」(宇野さん)

※女性セブン2019年1月1日号

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン