〈父親よりも母親の遺伝子が子供の学力に影響する〉──そんな新説が今、世の中のお母さんたちをザワつかせている。
あまりにショッキングな言説が世に出回るきっかけとなったのは、2018年3月に文部科学省が公表した報告書だ。
この報告書は、全国の小学6年生、中学3年生延べ200万人に実施した「全国学力・学習状況調査」(通称・全国学力テスト、2017年度)と、「両親の学歴」「所得」「就業時間」などを尋ねた保護者12万人へのアンケートをもとに、家庭内のどの要因が子供の学力に影響するかを分析したもの。
分析の結果、「父親の学歴」よりも「母親の学歴」の方が、子供の学力に影響することがわかった。
これを受けて『週刊現代』(11月24日号)は、《わが子が勉強できないのは母親のせい、父親は関係ない》という記事で、母親の学歴どころか、「母から受け継いだ遺伝子が子供の学力を左右する」と主張した。
にわかに湧き上がる「子供の学力は母親が決める説」は、果たして本当か。母親の能力で子供の学力が決まるなんて、あまりに“不都合な真実”ではないか。だが、「私に学力がないからこの子は一生勉強ができないのね…」とあきらめるのはまだ早い。生物学者の池田清彦さんが言う。
「確かに統計上は母親の学力の影響が大きくなりますが、そもそも親から遺伝する遺伝子の組み合わせは膨大でX染色体上の知能に関係する遺伝子だけが子供の学力を決定するわけではありません。母親の学力が高いからといって、必ずしも子供の頭がよくなるわけではないのです」
学力に遺伝がかかわると言う慶應義塾大学教授(行動遺伝学)の安藤寿康さんも、「家庭環境」の大切さは無視できないと主張する。
「IQはおよそ5割が遺伝の影響を受けますが、残りの5割のうち3割は家庭環境が影響します。親からどんな遺伝子を受け継いだとしても、人間は学習をすれば能力は必ず伸びる。よい教育環境があれば、子供の学力アップが充分期待できます」
遺伝に関係なく、子供の能力を伸ばす学習法として知られるのが、日本における右脳教育の第一人者である七田厚さんが代表を務める「七田式」である。
「いくらいい遺伝子を受け継いでも、環境を与えないと生かせません。角界や球界においてはいわゆる“2世”の選手が活躍します。もちろん親からもらった遺伝子もあるとは思いますが、それだけではなく、小さなときから親におもちゃのボールやバットを買ってもらって遊びながら野球に親しむなど、環境が整っている場合が多い。才能が花開くには環境が必要なのです」
七田さんが続ける。
「小さいうちに、ひらめきや創造力といった直感的な働きを担う右脳を鍛える教育法こそが、後の子供の才能を伸ばします。子供は大きくなるにつれて言語や理解を担う左脳が優位になるので、右脳が優位な0~6才のうちに幼児教育をして、子供の持つ潜在能力を引き出します。特に0~2才児は非常に吸収がよく、その頃までにそうした教育を行うと、効果が高まるのです」