いわゆる“家族葬”や“直葬”といった、小規模な葬儀を選ぶ人が増えている。しかし、家族葬や直葬は、近年ようやく認知されはじめたので、まだまだ“全国共通”とは言い難い。そのため、家族葬を行う際は、事前に親族との認識をきちんと擦り合わせておかないと、後に大変なことになることも。埼玉県在住の50代主婦の桐谷さん(仮名)が自身の体験を話す。
「義父の葬儀でした。家族葬で送ることは以前から相談していましたし、家族は納得しているはずでした。なのに、葬儀当日になって、田舎から出てきた義姉が突然、『こんな小さな葬儀じゃ、お父さんがかわいそう』とか、『みじめな葬儀で何とも思わないのか、ひどい嫁だ』と散々わめき散らしたんです。葬儀を再度やるのだけは免れましたが、この一件で私と義姉の関係は修復不可能な状態になりました」
義姉が怒り出した理由について、日本エンディングサポート協会理事長の佐々木悦子さんが話す。
「事前に話していたとはいえ、一般的な家族葬は私たちが思っているよりも質素なものです。そのイメージがしっかりとできている人はよいのですが、電話で事前に聞いた程度、しかも家族葬に肯定的な人から聞いた情報では、実際に目にした時と想像とのギャップは大きいでしょう。
また、都市部と地方では葬儀に対する温度感も違います。地方では、『葬儀は知人・友人も含めたみんなで見送るもの、家族葬は親不孝』という感覚が強いため、遠くの親戚が『こんなみじめな葬儀でかわいそう』と怒り出したりするのです。
家族葬や直葬を選ぶ際は、地域の温度差や地元のしきたりにも注意を払う必要があるでしょう」
親族とのトラブルだけでなく、家族葬や直葬を主催した遺族自身が耐えられなくなることもあるという。
「意義を理解していても、あまりにこじんまりとした葬儀や、淡々と事務的に葬儀が進むのに耐えられず、火葬後に再度、葬儀を行った遺族もいます」(佐々木さん)
葬式は、故人を葬るためでもあるが、送り出す遺族がお別れするための心の整理の時間でもある。いくら家族葬や直葬が格安とはいっても、一度の判断が一生の後悔につながらないよう、決断したい。
※女性セブン2019年1月1日号