日本で最も罹患数が多いがんで、年間約5万人が命を落とすのが胃がんである。ステージIの5年生存率は95%と高いので、早期発見が重要だ。しかし胃の内視鏡検査では、がんが慢性胃炎のなかに隠れているケースなどがあるために発見が難しく、「見逃し」は5~25%との報告もある。
こうした課題を解決すべく、AI(人工知能)の画像認識能力を取り入れたのが、がん研有明病院とAIメディカルサービスが共同開発した「AI内視鏡画像診断支援システム」だ。1万2000枚以上の胃がんの内視鏡画像に、内視鏡医が病変の範囲を細かくマーキング。そのデータを独自のディープラーニング・システムによってAIに学習させた。開発されたシステムは胃がんの原因となるピロリ菌胃炎も検出するという。
東葛辻仲病院(千葉・我孫子市)では2018年5月にこのシステムを導入。患者は胃がんとオプションのピロリ菌胃炎検査、AI非対応の大腸がんの検査も組み合わせることができる。時折胃の痛みに悩まされる本誌記者が体験した。
事前に「胃がん、ピロリ菌胃炎、大腸がん」の3つの検査予約を入れ、検査当日、午前8時に病院へ。まず経口腸管洗浄剤を2リットル飲み、大腸を綺麗にしてから午後の検査を待つ。
検査着に着替えるよう指示され、順番が来たのは午後1時半頃。2台の大型モニターとパソコンが置かれている検査室に案内され、中央の診察台に横向きに寝る。喉に麻酔スプレーをされ、鎮痛剤を飲むと、すぐに意識が朦朧としてきた。
気がつくと別室のベッドで寝ていて、時間は午後3時半。診察では担当の柴田淳一医師に画像のコピーを渡され、説明を受ける。