今年1年、どんな本を読みましたか? 3人の社会派が選んだそれぞれの“2018年の3冊”を紹介する。
【青木理(ジャーナリスト)が選んだ3冊】
『ある男』平野啓一郎(文藝春秋)
薄汚いヘイト言説や歴史修正主義がはびこる中、当代随一の作家が真正面から時代と社会に向き合った。現代日本の課題がモチーフとして巧みに織り込まれ、エンターテインメントとして楽しめて、しかしガッツリ硬派な思考を要求する必読の1冊。
『永遠のファシズム』ウンベルト・エーコ 訳・和田忠孝(岩波現代文庫)
『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』樋田毅(岩波書店)
【奥田英朗(作家)が選んだ3冊】
『宿命 警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年』原雄一(講談社)
警察組織のありように唖然とし、さもありなんと納得させてくれる一冊。NHKスペシャルでも二週にわたって取り上げられた。恐らくここに書かれてあることが、一連のオウム真理教事件の最中に起きた国松長官狙撃事件の真相だろう。国家は恐ろしい。
『老いぼれ記者魂 青山学院春木教授事件四十五年目の結末』早瀬圭一(幻戯書房)
『毒婦 和歌山カレー事件20年目の真実』田中ひかる(ビジネス社)
【出口治明(立命館アジア太平洋大学〈APU〉学長)が選んだ3冊】
『革命 仏大統領マクロンの思想と政策』エマニュエル・マクロン 訳・山本知子、松永りえ(ポプラ社)
マクロンの政治家としての手腕は未知数だが、あらゆる物事を原点から考え直し、自分の言葉で世界を整合的に再構成していく思考の力は素晴らしい。人間が自分のアタマで考えるとはどういうことか、そのヒントがたくさんちりばめられている。
『陰謀の日本中世史』呉座勇一(角川新書)
『テンプル騎士団』佐藤賢一(集英社新書)
※女性セブン2019年1月3・10日号