今年1年、どんな本を読みましたか? 個性的な6人が選んだそれぞれの“2018年の3冊”を紹介する。
【内田春菊(漫画家)が選んだ3冊】
『極主夫道』おおのこうすけ(新潮社)
息子がジャケ買いしてきて家中で絶賛しています。有能な専業主夫になった元極道の主人公がカッコイイだけでなく、整理され尽くしたネーム(セリフ)、誠実な情景描写、今どき感溢れる人物の反応など、漫画ならではの楽しみがいっぱいです。
『遺伝子 親密なる人類史』(上・下)シッダールタ・ムカジー 訳・田中文 監修・仲野徹(早川書房)
『医学は何ができるか』ルイス・トマス 訳・石館康平、中野恭子 (晶文社)
【角野栄子(作家)が選んだ3冊】
『まんが少年、空を飛ぶ 特攻隊員・山崎祐則からの絵手紙』山崎祐則 解説・稲泉連(偕成社)
ユーモアあふれる漫画の手紙を家族に残して19歳の少年の命は戦争により奪われました。夢をもって生きた一人の少年の記録を、是非読んでください。
『ドエクル探検隊』草山万兎 画・松本大洋(福音館書店)
『風がはこんだ物語』ジル・ルイス 絵・ジョー・ウィーヴァー 訳・さくまゆみこ(あすなろ書房)
【オカヤイヅミ(漫画家)が選んだ3冊】
『公園へ行かないか? 火曜日に』柴崎友香(新潮社)
各国の作家が参加するアイオワ大学の企画に参加した作者の体験を元にした11篇の連作小説集。日本語を使わない日々の、その時にしかない風景や感情がありありと感じられ、ただ散歩をしている描写の切なさをなぞりたくて何度も読んでしまう。
『カフカの父親』トンマーゾ・ランドルフィ(白水社uブックス)
『ザ・マンガホニャララ 21世紀の漫画論』ブルボン小林(クラーケン)
【伊藤比呂美(詩人)が選んだ3冊】
『精講 漢文』前野直彬(ちくま学芸文庫)
これを高校生のときに読みたかった。まだ読み終わっていませんが、ぶ厚い文庫本がすでにぼろぼろ。「兮」は「日本の民謡でいえば『木曽のナー、なかのりさん』の『ナー』にあたる」という説明が、先生、すてきすぎます。
『地球にちりばめられて』多和田葉子(講談社)
『愛なき世界』三浦しをん(中央公論新社)
【木村泰司(西洋美術史家)が選んだ3冊】
『カンパン夫人 フランス革命を生き抜いた首席侍女』イネス・ド・ケルタンギ 訳・ダコスタ吉村花子(白水社)
ヴェルサイユ宮殿を訪れる際には、当時の王侯貴族たちの生活がどのようなものだったのかを知っているといないでは、感動の度合いも違ってきます。王妃マリー=アントワネットの息吹とため息が、まるで間近で聞こえてくるような1冊です。
『教養としての聖書』橋爪大三郎(光文社新書)
『蝶々にエノケン 私が出会った巨星たち』中山千夏(講談社)
【東直子(詩人、作家)が選んだ3冊】
『リトルガールズ』錦見映理子(筑摩書房)
友達、恋人、夫婦など、名前のある関係は、何かを決定した上でのもの。でもここでは、決めつけることのできない感情の、微妙な関係性が、いろいろな角度からじわじわ迫ってくる。一人は無力。人生は自由。ただただ一生懸命「自分」を生きる。
『曇天記』堀江敏幸(都市出版)
『ウィステリアと三人の女たち』川上未映子(新潮社)
※女性セブン2019年1月3・10日号