「生活とリハビリ研究所」代表の三好春樹さんは1950年生まれの団塊世代。介護職の第一人者として、この世代がいよいよ迎える老年期は、特に男性にとって危機だと言う。
「ぼくたちは“自立した個人”になることを目標に育った世代。学生時代には、集団誇大妄想だけど“革命!”などと叫んで石や火炎瓶を投げたりもした世代なんです。社会が不安定だった分、大いなる自由があり、そんな中で自立を至上の価値と思って生きてきたのです。
だから、人に『助けて』とは絶対に言えない。いろいろな面で手助けが必要になったとき、本人も介護する人もいちばん困るのがここだと思う。老いた自分と、自立した個人であるべきという理念とのギャップがどんどん広がり、頭を抱えているのが、厄介な頑固おやじの姿でしょう」(三好さん・以下「」内同)
そして、ここでもやはり、男の性質が立ちはだかる。
「老いは自然の営みです。子供を産む女性は自然と共に生きているから、老いも柔軟に受け入れて、開き直れる。ところが男性は、自然とは別次元の観念の世界に生きているから、自然に老いて死んでいくことが受け入れられない。うちの父(94才)などは進歩主義者で、一緒に老いている母(92才)の老化も医学で治せると思っていて、リハビリをやたらにすすめたりします。
高齢男性は万事こんなことだから、要介護になっても娘や妻の言うことはまず聞きません。特に娘は、自分が養ってきた“自立したオレ”を象徴する存在。『お父さん、デイサービスに行こう』には頑として動きません」
※女性セブン2019年1月3・10日号