いよいよ年の瀬、来年もうまいものを食いにいく1年にしたいものだ。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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新年を迎えるこの時期、「2018年の総括」「2019年の展望」というような原稿を書く機会が増える。原料供給に影響を与えるような災害やBSEといった社会的事象や、リーマンショックやバブル崩壊のような極端な経済的後退がなければ、「食」や「食文化」においてすべては地続きだ。
2018年から2019年へと続く「食」のトレンドは「辺境と懐古の1年」であり、さらなる深化と細分化がなされていく1年だ。2018年の総括でも書いたように、中華やイタリアンといったメジャーな食のジャンルで、これまで日本であまり見なかった地方の料理や郷土料理を食べられる店が増えている。
国外の郷土料理を志向する店は、都内なら城北地区や下町など比較的のどかなエリアの地元民には知られていたが、近年では港区や目黒区など城南地区から”遠征”する美食家もずいぶんと増えたし、逆に城南地区への出店も目立つようになってきた。認知が高まり、いいシェフがいれば飲食業として成立するメドがつくマーケットも確立された。
辺境という意味では、新業態の店舗も増えている。都内だと大久保・高田馬場あたりには韓国、中国系のほか、ミャンマーなどの現地コミュニティがあり、留学生も多い。彼らにとっての”懐古”を刺激する飲食店はますます伸びていくことが予想される。じっさい、大陸の大衆中華「沙県小吃」や台湾で大人気のタピオカドリンクスタンド「CoCo都可」ブランドなども続々増殖中だ。
またブランドやチェーンばかりでなく、個店として新疆ウイグル自治区や中央アジアの料理を出す店が都内各所に点描を打つように増えてきている。東京の辺境化はますます進み、業態は細分化し、そこで出される料理は、より現地化・深化していくはずだ。
日本人にとっても”懐古”的な食は増えている。象徴的なのがとんかつだ。10年ほど前までは老舗の独壇場だったが、近年長く老舗で修行した職人が独立するなどして新たな業態や店舗を展開するケースが増えてきた。
特に2018年はとんかつの新店が神宮前や中野などに続々開店。近年の新店で特徴的なのは「火入れ」。安全圏を見極めながらジューシーなロゼ色の仕上がりを目指す店が目立って増えた。懐古趣味的でありながら、実はアップデートされた皿が提供されるのが現代のとんかつ最前線なのだ。
同様のパターンに「タレ焼肉」業態がある。バブル以降「肉は塩で食べるのがツウ」というような風潮が一部にあったが、近年タレへの揺り戻しがあり、さらに2018年の後半に相次いで、「タレ焼肉」を売り物にした焼肉店が開店した。神楽坂の新店などは一皿まるごと豪快に鉄板にぶちまけつつ、お店が焼きの面倒を見てくれる関西スタイルを採用。きちんと肉の面倒を見さえすれば、一見乱暴に焼いてもうまい焼肉が食べられる。そんな関西の焼肉文化はどこまで関東に浸透するか。