「AI(人工知能)医療診断」は驚異の進化を続けている。ほくろが皮膚がんか否かの診断は、医師の経験や能力で差が出るという。
そこで、筑波大学附属病院では、AIによる皮膚がんの画像診断補助システムを開発している。数年内の実用化を目指す実験段階で、実際の診断では使われていないが、今回特別に本誌記者が被験者として体験した。開発に携わる筑波大学医学医療系皮膚科准教授の藤澤康弘氏はこういう。
「人間の医師が行なうほくろやできものの診断は、病歴を聞いて、目で見て、触り、判断に迷った場合は組織を採取して細胞診に回します。一方、AIは、ほくろやできものの画像のみで判別する」
今回この診断を体験した記者の鼻の下には、高校生の頃にうっすらでき、だんだん大きく濃くなってきたほくろがある。このほくろを藤澤氏はデジタル一眼レフで撮影。パソコンに読み込んでほくろの部分だけを切り抜く。解像度はそれほど高くなくても構わないそうで、スマホで撮ったものでも分析は可能だという。
この画像を、AIが搭載されているパソコンに取り込む。AIには筑波大が15~16年間にわたって蓄積した皮膚腫瘍や関連疾患の画像約6000枚を読み込んで学習させ、メラノーマ(悪性黒色腫)や有棘細胞がん、良性の腫瘍も含めた14種類の皮膚腫瘍を識別できるようにしている。
画像をAIに読み込ませておよそ15秒。結果は「NCN(ほくろ)100%」と出た。記者のほくろは悪性ではなかったのだ。