バブル崩壊以降、衰退の一途をたどっていた日本有数の温泉地・熱海だが、近年、街並みやホテルの再開発などによって見事復活を遂げつつあるという。果たして、人気復活は本物なのか。ホテル評論家の瀧澤信秋氏がレポートする。
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近年、旅行の態様が変化した例として“団体から個人へ”というワードを耳にする。個室が並ぶホテルは、ある程度の客室数があれば団体客も受け入れられるし、もちろん個人客にもマッチした業態だ。
他方、旅館はどうであろうか。高度成長期からバブル期に隆盛を誇ったのは、社員旅行、観光旅行を例とする大型の団体を受け入れる温泉地の大規模な施設であった。和室を中心とした客室は定員4名、6名、中には10名という大部屋も。大人数で利用できる大浴場に大宴会場、カラオケスナックにゲームセンターなど、団体客を想定した大型温泉観光旅館ともいえる施設だ。
東京から団体客が大挙して押し寄せた温泉地が熱海であった。宿泊施設の活気もさることながら、熱海といえば夜の盛り場も賑やかで、男性諸氏にも人気の温泉地として名を馳せた。
そんな熱海もバブル崩壊の影響をもろに受け観光客は激減。宿泊施設利用者数でみると、バブル崩壊直前の1991年には約440万人だったが、2002年度には300万人にも届かなかった。その後もリーマンショックや震災などが重なり、2011年度には約246万人と、20年前と比較して半減にも迫る減少となった。
宿泊施設等の団体客増減が世の中の景気動向の判断材料にされることがある。景気に左右されるのも団体客といえるが、特に温泉地の大型施設にとっての生命線もまた団体客である。
景気が衰退し団体客が減少したからといって、多くの施設では一朝一夕に個人客向け施設へ方向転換できる資金もなく、熱海では大型旅館を筆頭に宿泊施設の廃業が相次いだ。団体客依存の内在するリスク顕在化といえる。これは熱海に限ったことではなく、全国各地の温泉地でも同様のケースがみられたが、首都圏が大規模マーケットであった熱海の衰退は特に目立ち、温泉観光の衰退例として度々取り上げられた。
そんな熱海がいま活況に沸いているという。2017年の市内宿泊客数をみるとバブル時には及ばないものの307万人余りで、前年比で4万5000人ほどの増加、3年連続で300万人を超えているという。