2012年の民主党から自民党への政権交代以降、「都心」「駅近・駅前・駅直結」「大規模」「タワー」といったキーワードに象徴される新築マンションは価格上昇を続け、中古マンション市場は3年連続で新築マンション発売戸数を上回る見込みなど、好調を続けてきた不動産市場。はたして2019年はどうなるのか──。不動産コンサルタントの長嶋修氏が予測する。
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筆者は毎年、不動産市場の予測を続けていますが、2019年の予測ほど難しいものはありません。というのも「不確定要素」「不安要素」が多すぎるためです。国内・海外とも、政治・経済的に大きな変調がみられます。
まずは国内から。10月に予定されている「消費増税」。かつてのような駆け込みやその後の落ち込みがないよう、住宅に関しては「住宅ローン減税期間を10年から13年へ延長」「すまい給付金や住宅エコポイントの給付」などが検討されており、想定通りなら増税前後で大きな変化は起きなさそうですが、気になることがあります。
それは「消費の冷え込み」です。京都大学大学院の増田聡教授らが行った消費者心理実験によると、8%から10%への増税は「税額を計算しやすい」という理由ゆえに、他の時の1.4倍、女性に限れば2.9倍もの買い控え効果があることが判明したというのです。
こうした実験は、被験者への問い方の問題などもあり、必ずしもこの通りになるとは限りませんが、もしこのようなレベルで消費が控えられた場合、景気や株価が落ち込みといったルートを通じて不動産市場に下落圧力が働く可能性もあります。
次に「国際的な金融情勢の変化」。FRB(米連邦準備理事会)は継続的な利上げを表明、ECB(欧州中央銀行)もFRBに続き金融緩和の終了を表明しており、やがて利上げの是非やその程度やタイミングに焦点が移るでしょう。
原則として国際的な協調が求められる金融政策において、日銀はいつまで現行の「大規模金融緩和」や「低金利政策」を継続していられるのか。仮に消費増税と日銀の政策変更が重なれば、消費や投資の落ち込みは避けられず、不動産市場に限らず景気そのものが大きく落ち込む可能性があります。
もとより不動産市場は株価との連動性が高く、東京都心5区(中央・千代田・港・新宿・渋谷区)などの中古マンション成約単価は、見事なまでに日経平均株価に連動してきました。それに倣えば、現行の株価水準だと都心部の中古マンション価格は、だいたい15パーセント程度高いということになります。
両者の連関は3か月程度のタイムラグを伴っており、株価水準がこのままなら来春には都心中古マンション価格は相当程度下落しているはずです。ちなみに新築マンション価格は、デベロッパーが価格をコントロールしておりその限りではありません。