昨夏の甲子園、記念すべき100回大会を制し3781校の頂点に立ったのは、やはり大阪桐蔭だった。秋のドラフトでも4人をプロへ送り出し、「最強」の名を欲しいままにする。長く、同校を取材しているスポーツジャーナリストの古内義明氏が、西谷浩一監督を訪ね、強さの秘密に迫った(第1回/全3回)。
──平成最後の年となった昨年1年間を振り返ってみて、如何ですか?
西谷監督:本当に、内容の濃い1年でした。史上初となる2度目の春夏連覇(2012年・2018年)は、すでに過去のものという感じです。
──100回記念大会という節目で、春夏連覇という偉業を達成したことには?
西谷監督:「100回大会に向けて、計画的に準備してきた」とよく言われていますが、99回も、100回も、101回も全て勝ちたいと思って、準備してきました。
一昨年の春の選抜は優勝し、夏の甲子園の3回戦で仙台育英に9回裏2死からサヨナラ負けを喫し、翌年は節目の100回大会ということでリンクされて、皆さんに盛り上げてもらいました。節目の大会だから特別な補強をしたということはなく、根尾昂、藤原恭大、中川卓也といった下級生の頃から試合に出ていた選手が、最高学年になった年でした。
100回記念大会という、ワクワク感はありましたし、今振り返ると、どこかで意識していたのかもしれません。新たに始動したチームで冬を超え、昨年の春の選抜大会前は、「大阪桐蔭は最強世代だ」と言われるのはすごく嫌でした。最強世代と言われるのは、子どもたちの成長の妨げになるのではないか、という気持ちがあったからです。しかし、昨年の春の選抜で優勝した後は、避けて通れないからこそ、うまく利用しようと考えました。注目されている中で、いかに勝利をつかみ取る力を付けなければならないと思いました。
春夏連覇は100年の歴史の中でも7校しか達成していない上に、われわれは2017年に連覇に失敗しています。その翌年、簡単にできない春夏連覇のチャンスがもう一度巡ってきたことで、臆することなく、勝負するしかないと、開き直ることが出来ました。結果として、夏の甲子園は優勝出来ましたが、大阪府大会や甲子園大会、その後の秋季大会も毎日が必死でした。甲子園の決勝戦は、甲子園全体が金足農業を応援する雰囲気になっていましたし、全く余裕はありませんでした。いま振り返れば、注目してもらえるような決勝の対戦カードになったのは、100回大会の運命だったと思います。
──ドラフトで、同一高校から歴代最多タイのとなる4名(根尾、藤原、横川凱、柿木蓮)が指名されました。
西谷監督:プロ野球の世界は、大学野球や社会人野球とは違って、指導者がお願いしたから進むことのできる世界ではありません。4名がドラフト志望届を提出し、4名共に良い球団からご縁があったと思います。大阪桐蔭からプロ野球界に、選手を送り出したいという観点からは、少しホッとしています。ただ、ホッとしたのもつかの間で4名がプロの世界で戦っていけるかどうか、今は心配です。ドラフト後も、選手たちは必死に練習しています。