正月休みに親子でトランプや双六(すごろく)などのゲームで盛り上がる家族も多いだろう。ゲームやギャンブルに勝ち負けはつきもの。勝敗確率は「運次第」と思いがちだが、じつは簡単なコイン投げでも有利・不利が分かれるゲームがある。ニッセイ基礎研究所・上席研究員の篠原拓也氏が紹介する「ペニーのゲーム」もそうだ。
* * *
確率や統計の話題には、ギャンブルと関係するものが多い。サイコロ、トランプ、ルーレットなどで、さまざまな研究や分析が行われている。
その中でも、単純なコイン投げにまつわるものは、数多くある。今回は、研究者の間で知られている「ペニーのゲーム」を紹介しよう。このゲームは、いまからちょうど半世紀前の1969 年に、ウォルター・ペニー氏が数学関連の雑誌上で発表したことにちなんで、このような名前で呼ばれている。
まず、偏りのないコインを1枚用意する。このコインを繰り返し投げて、出た面が表か裏かを書き記すことにする。表は英語のHeadを表す「H」、裏はTailを表す「T」の文字で記す。たとえば、
H T H H T H T T T H T H H T T T H T H T……
といった感じで、コインの出た面に応じて、文字列ができあがっていく。
ペニーのゲームは、AさんとBさんの2人が対戦する形式で行われる。2人は、HとTを使ってできる3文字のパターンの中から1つを選ぶ。そして、コイン投げを繰り返すことでできあがっていく文字列の中に、選んだ3文字のパターンが、先に現れたほうの人が勝ちとなる。
3文字のパターンとして考えられるのは、つぎの8通りだ。
(H H H)、(H H T)、(H T H)、(H T T)、(T H H)、(T H T)、(T T H)、(T T T)
まず、Aさんが、この8つの中から1つパターンを選ぶ。次に、Bさんが、Aさんが選んだ以外の、残りの7つの中から1つパターンを選ぶ。AさんとBさんの選んだパターンのうち、どちらが先に現れるかで勝負が決まる。
ここで、このゲームの勝負の行方について、すこし考えてみよう。