身体の異変に気づいた時、患者が冷静な判断を下すことは難しい。医者の言いなりになってしまったり、勝手な思い込みで行動してしまったり……。後々になってそれが重大な分岐点だったことに気付いても、後悔先に立たずだ。
定年退職し悠々自適な生活を送っていたA氏(71)は数日間、「微熱」と「だるさ」を感じていた。平熱は36度前後だが、熱を計ってみると37度ほど。息切れと胸痛が生じて、ゴホゴホと咳き込む日が続く。
「この程度なら、放っておけば治るだろう」と自宅で静養していたが、症状はなかなか収まらなかった。
もともとA氏はコレステロール値が高めで、近所にあるかかりつけのクリニックで薬を処方してもらっていた。
かかりつけのクリニックを受診したA氏は、胸部レントゲン検査を受けた。その結果、肺に小さな“影”があり、精密検査を受けることに。胸部CT検査を受けると、結果をこう告げられた。
「初期の肺がんです」
思わぬ言葉に目の前が真っ暗になったA氏。あれこれ考える時間的猶予も精神的余裕もない中で、がん治療に実績のある病院に移る必要が出てきた。A氏は悩んだ末、がん治療に実績のある総合病院を受診することにした。
◆初期のがん治療は「放射線」か「手術」か