「富士登山」や「空中ブランコ」のほか、数えきれないほどのダイエットを体験しているモデル兼肉体派ライター、“オバ記者”こと野原広子が、61才からの“職探し”を体験した!
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「60才過ぎたら仕事がないって? いやいや、とんでもない。職探しどころか、『ぜひ来て』って“プロポーズ”が毎日よぅ」。同世代の友達と会うと、最近始めた仕事の自慢をついついしちゃう。でも、その実、“人生いろいろ”な体験がびっしりで…。
実は私、ライターとして立ち行かなくなるとアルバイトをする。一昨年の年末はホテルの客室清掃を10日間した。
で、昨年は諸般の事情で、秋口から職探しをするハメに。ヘラヘラ笑っていたけれど、正直、けっこうな覚悟を決めて派遣会社に登録したんだわ。
あの時は、まさか、ここまで甘辛しょっぱくも刺激的な思いをするとは思わなかった。
◆“仕分け作業”の現場は、「刑務所みたい」という声も
ネットの求人募集に申し込むと、すぐにスマホに連絡があって、面談日を決め、登録をすると、仕事の依頼がスマホに毎日送られてくる。短期も長期も、こちらの希望次第。仕事は倉庫での仕分け作業に、スーパーでの品出し、オフィスの清掃と、どれも表舞台ではなくてバックヤードだ。
でも、求人情報をじっくり見ると、同じ仕分けでも“おもちゃ”とか“化粧品”とか、“輸入雑貨”とか、触っているだけで心浮き立つようなものもあるんだよね。で、最初に私の目に留まったのは、「誰にでもできる簡単な書類の仕分け。制服あり、通勤の服装自由、ピアスOK。きれいな倉庫」。
時給は1000円で交通費は全額支給、とごく一般的だけど、“ピアスOK”に自由な空気を感じて、4日間、ここで働くことにした。当日、始業は朝9時でも、倉庫前の集合は8時40分。入館カードを受け取り、作業着の試着をして、就業の決まりと仕事の説明を聞いて…。
40代の四角メガネ男にいろんなことを一度に言われて、何が何だかわからない。そのうち聞き覚えのない言葉が出てきたのでつい、「それはどういう意味ですか?」と聞くと、“四角メガネ”の顔色がサッと変わって、「あんた、話、聞いてるの!」。
いきなりのカウンターパンチを浴びた。更衣室で、手渡された上下の作業着に着替えた私たちに、彼は言う。
「作業服にはポケットがついていません。ズボンのすそは外折に折らないで内側に折ってください。皆さんを疑うわけではありませんが、倉庫のものを隠して持ち出すのを防止するためです」
それだけじゃない。作業室から出入りするときは、「何も持っていません」という意味で、両手をあげて“きらきら星”のような格好をするのが決まりなんだって。
「刑務所みたい…」
お揃いの作業着を着た私たちを乗せたエレベーターの中で誰かが小声で言うと、何人かがウンウンとうなずいた。どうやらここは団体行動をするところらしい。なのに、間の悪いことにロッカールームに老眼鏡を置き忘れたことに気がついた。