がめつい商売人、陽気なおばはん、阪神ファンの都といったイメージが強い大阪。だが、それらはたまたまテレビで取り上げられたことをきっかけに広まった、作られたイメージだった──こう指摘するのは、11月に『大阪的』(幻冬舎新書)を上梓した国際日本文化研究センター教授の井上章一氏。大阪がなぜ、猥雑なイメージで語られるようになったのかを井上氏が解説する。
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猥雑なイメージを伴って語られるのも、大阪の特徴です。スケベな街である、と。あるテレビ番組が、札幌から博多までの10大都市をパネルに書き、どこが一番スケベな街だと思うかを都内で街頭インタビューしたところ、その半数は大阪を挙げました。
戦前の大阪府警は、男女がペアで踊る社交ダンスすら大阪市内での営業を禁止したほど、“清らかな都市”であることに力を注いでいた。ソープランドも大阪では発達しなかった。それがなぜ、こんな事態になっているのか。
起点となったのは、1980年に阿部野にオープンした伝説のノーパン喫茶、『あべのスキャンダル』です。この店のおかげか、ノーパン喫茶を大阪発祥とする声が多く、そう記した風俗誌も目にします。しかし、ノーパン喫茶の発祥は、それより前、京都の西賀茂にできた喫茶店『ジャーニー』だとここで世の通説を正しておきます。