死を迎えた後も、人格や魂は存在し続ける──人間は「身体」と「魂」の組み合わせであるという二元論は、「生まれ変わりの謎」の根底にある考え方なのだろう。そうした死生観について徹底的に考察を重ねた哲学教授の著作が、世界的ベストセラーになっている。
シェリー・ケーガン教授が米イェール大学で行なう講義の「風景」は独特だ。ネクタイはせず、ジャケットも着ない。机の上に胡座をかく姿は、米国人の受講生には「東洋哲学を説く高僧のよう」に映るという。
邦訳本『「死」とは何か』(文響社)は、23年間続いているケーガン教授の人気講義をまとめた内容だ。
原著『DEATH』では、前半で「魂とは何か」「肉体が死んだ後に我々は存在するのか」を考察し、後半では「死は怖いのか」「永遠の生命は望ましいのか」などに言及する。それは一切の宗教的考察を排した、論理的思考によるアプローチだ。
ただし、邦訳版には〈縮約版〉とあるように、前半部分の大半が割愛されている。古代ギリシャ、ローマ時代の哲学論を引用しつつ考察を進める前半の内容は、名門・イェール大学(しかも上級課程)の学生向けのもので、確かに“アカデミックすぎる”かもしれない。
ケーガン教授は「死」に関する数々の考察を著わしている。講義同様、「君への問いかけ」をきっかけに賛否両論を織り交ぜる“ロジカルな禅問答”ともいえるスタイルは興味深い。
◆「死後」と「誕生前」は違うのか?