即位から30年間、陛下の「旅」の総移動距離は62万kmを越えるという。地球を約15周半する距離だ。
明治・大正の天皇は皇居を離れると御用邸や軍施設に宿泊されることが多く、昭和天皇は土地折々の名旅館を好まれた。その一方で、平成の天皇陛下は島嶼部を含む日本の国土の隅々まで足を運ばれ、その土地の市井の人々と活発に交流し、身近な宿泊施設にも泊まられた。
まさに国民と共に歩まれた30年間。1月2日、皇居で行われた平成最後の新年一般参賀には、過去最多の国民がつめかけた。両陛下がどれほど国民を愛し、国民に愛されているかを物語る光景だった。元宮内庁職員で皇室ジャーナリストの山下晋司さんが言う。
「今年4月末に陛下が退位されると、両陛下は上皇と上皇后になられます。来年以降の新年一般参賀のお出ましは未定ですが、今年が最後になる可能性はあります」
12月23日に行われた、陛下の誕生日の一般参賀にも、過去最多となる8万2800人あまりが参加。中には夜が明ける前から皇居内の二重橋前で待機した人もいた。
誕生日会見で陛下は一言ひとことを噛みしめながら、災害の犠牲者への追悼や被災者への思い、先の大戦の慰霊の旅を振り返られた。さらには美智子さまへの労いや、国民への感謝の言葉とともに、自らの「人生の旅」を語られた。
時折声を震わせながら、お言葉を述べられた陛下の姿に、胸を熱くした人は少なくないだろう。宮内庁関係者が語る。
「あのように感情を抑えきれないご様子の陛下を見たのは初めてです。スピーチや会見では常に冷静でいらっしゃったので、驚きを隠せませんでした。『平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています』というお言葉には、ご自分の責務を終えられたという強い気持ちが感じられました。
もしかすると“これが人生で最後の記者会見になる”というお気持ちを持たれていたのかもしれません。上皇となられた後は、新天皇新皇后両陛下と秋篠宮ご夫妻にすべて任せ、表にはほとんど姿を見せられないという決意の表れではないでしょうか」
※女性セブン2019年1月17・24日号