お正月の三が日を過ぎると、コンビニやスーパーマーケットでは途端に、節分の飾り付けが登場する。大手コンビニによって2000年代に全国で認知されるようになった、恵方巻の予約を呼びかける垂れ幕やのぼりも出現する。近年では、恵方巻をはじめとした季節の食べ物の厳しい販売ノルマと買取強要がSNSや報道で問題視されたため、ノルマの強要は減ったと言われる。ところが、より巧妙に買取強要は継続されている。ライターの森鷹久氏が、その実態をレポートする。
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友達との与太話から近所で起きた事故、政界を揺るがすような大暴露まで、ありとあらゆる情報が当事者によりSNSで発信、拡散されるようになった現代。昨年はパワハラ、セクハラ問題がこうしたSNS告発によって明らかになるパターンも散見されたわけだが、年末から年明けにかけて、とある業界でもまた同じような告発を行おうとする若者がいた。いったい何が起きたのか?
「クリスマスのチキン、ケーキを僕らバイトが買わなきゃいけないっていう例のアレ。毎年ネットで話題になるし、ワイドショーでもやってるのに、うちの店長はバカなのかアホなのか…」
ため息交じりに打ち明けてくれたのは、埼玉県K市のコンビニ店でアルバイトする大学生のシンゴさん(21)。若者らしくSNS上で起きる様々なコト・モノを把握しているため、勤務先のコンビニ店長からクリスマスチキン、そしてケーキの予約を取ってくるようにといわれた瞬間に「アレだ」とピンと来たのである。アルバイトやパート従業員へのこうした買取・予約の強要はほとんど社会問題化しており、各コンビニ本部、大手小売店本部から「強要を禁止する通達が出ているとみられる」(大手紙経済部記者)というが…。
「実は店長、同級生のオヤジなんですよね…。古くから家族づきあいもあるし、今年も平然と言ってきたんです。でも、新入りのバイトは縁故採用でなく外から入ってきた子。友人まで限定公開のSNSに“チキン、ケーキの強要”を上げていたのを僕が発見し、店長に報告したんです」(シンゴさん)
新入りバイトが首になるのか、それとも強要が大拡散され、店が廃業に追い込まれるのか…。シンゴさんは固唾を飲んで見守ったが、結果は予想外の方向へ転がった。
「店長がバイトを集めて、ワンワン泣いて謝ったんですよね…。本部の目もあり、最低でもウン十個は売らなきゃいけないと。最後は新入りバイトに土下座して、頼むから投稿を消してくれと。もう見てられなくて、バイトも逆に謝っちゃったりして…。ネット(告発)のおかげで、俺らも無駄な買い物しなくて済んだと思う反面、店長のこと思うと心痛むんすよ…友達の親だし」(シンゴさん)