健康維持のために、検査や検診は重要なものだ。そこに間違いはないが、中には医療関係者の間で「意味があまりない」と言われているものもある。さらに、せっかく受けた検診でも、その後に活かさず、受けっぱなしでは意味がないという。
だが、職場で受けた検査結果の通知書には秘密がある、と話すのは、国立がん研究センターの検診研究部長で医師の中山富雄さん。
「職場の健康診断では、結果を受けていっせいに社員に休まれると困るので『要精密検査』の割合を1%以内にする、という取り決めを行っているところがある。寸評のコメント欄も『症状があったら診察を』とか『半年以内に医師の診察を』などと弱めの表現にするようです」(中山さん・以下同)
それでは本当の健康状態が本人に伝わらないのではないかと思うが…。
「そもそも検査結果として出てくる数値をどう評価するかは、それを発行する医療機関によって違います。同じ数値でも一方では“異常あり”のものが“異常なし”になったりすることもあります。できる対応としては、かかりつけ医のように、検診も毎年同じところで受けることですね」
「要精密検査」となると、恐れおののいてしまうが、いつ、どうやって再検査を受ければいいのか。
「基本的に『半年以内に診察を受けましょう』と書いてあれば、そのとおりにすればいいが、がん検診の陽性だけは、別と考えて。部位によって異なりますが、早く進行していく恐れもある。できるだけ早く精密検査を受けた方がいい」
肺がん検診陽性を8か月放置した男性がいたそうだ。
「がん検診が陽性だったにもかかわらず、紙を1枚渡されただけだったため、忙しさにかまけてそのままにしてしまったそうです。8か月経って診察すると、気管支の半分が狭窄してしまうほど、がんが進行していた。この患者は奇跡的に治療がうまくいって生還しましたが、何があっても、放置してはいけません」
がん検診で陽性が出ても、本当にがんである可能性は20分の1程度。むやみに怖がって、再検査を先延ばしにするのは避けたい。だが、女性では次のような例も少なくない。
「女性では、何年かぶりにがん検診を受ける人もいますし、がんであることがわかっても、夫に先立たれた人の場合、『お父さんがお迎えに来た』『年だし、もう治療しなくていい』などと言うケースもありました。今の時代、70才は充分若い。治療が怖い気持ちもわかりますが、治るがんも多くあるので、きちんと治療を受けてほしい」
新しい元号で最初のお正月がやってくるのは1年後。そのときは、また皆で元気におせちを囲めるよう、必要な検診・検査をしっかり見極めて受診したい。
※女性セブン2019年1月17・24日号