山東省出身の郭文貴氏・元海通証券会長が大富豪となったのは、曽慶紅・元国家副主席の側近で、海外のスパイ工作の責任者だった馬建・元国家安全部副部長とのコネを利用したからだった。個人資産は最大時で約180億元(約3000億円)だったと言われる。ところが2015年、馬氏が汚職で逮捕されたことを事前に察知し、香港経由で米国に逃走した。亡命申請の一方で、汚職に関わり米国に逃亡し国際刑事機構(ICPO)から指名手配を受けている。
郭氏が米国に逃亡した際、馬氏から得た中国共産党・政府高官のプライベート情報や党政府機関の機密書類も多数携行したと伝えられている。そして、中国最高指導部の1人で、習近平国家主席の腹心である王岐山・中国共産党中央規律検査委書記(政治局常務委員)やその親族の「裏金作り」などを告発した。まさに中国の闇を“知り過ぎた男”である。
中国共産党との対決姿勢を強めている郭氏が、新たな戦いを宣言する。
「2019年は私の爆料(バオリャオ、暴露)革命が真のパンドラの箱を開ける年となる。
近日、私は(元米酒席戦略館のスティーブン・)バノン氏とともに、中国の不正を監視する基金を立ち上げることにして、1億ドルを出資した。法治の意識に欠けた中国の盗国賊(ダオグオゼイ、売国奴)どもを、情報を武器に追い詰めていくのだ。
目標は2020年に中国共産党を滅ぼし、中国を法治的で平和を愛する国家に作り上げることだ。現在のような「詐欺国家」を、これ以上のさばらせておくわけにはいかないではないか。
私は戦闘を継続する。一切都是剛剛開始(すべてはまだ始まったばかりだ)」
■聞き手/山久辺参一
※SAPIO2019年1・2月号