四季折々の中に様々な風習がある日本。しかし、その成り立ちや由来を知らないことも多いだろう。たとえば、3月の桃の節句はどうだろうか──。
3月には、冬籠りをしていた虫や動物が、陽気に誘われて地上に現れる「啓蟄」と、昼夜が同じ長さになる「春分」が二十四節気にあたる。大きな行事は3月3日の桃の節句と、春分の日をはさんだ彼岸の2つだ。
また、中国の暦では日本の季節の変化を充分に表せないため、日本独自の暦日「雑節」が設けられており、その中で、春分と秋分に最も近い戊の日を「社日」という。春の社日である「春社」は本格的に農作業を始める日で、土の神を祀り、五穀の種を供えて豊作を祈願する。
3月3日は女の子の成長を祝い、幸福を願う「桃の節句」が行われるが、正式には「上巳の節句」という。上巳とは、3月初めの巳の日という意味だ。日本の伝統文化を伝える『しつらい教室「食和家」』を主宰する、大田サチさんが説明する。
「中国では、『踏青』といって、川辺に出て青い草を踏み、川の流れで禊を行う風習がありました。これに日本の祓の信仰が結びつき、紙や草木で作った人形に穢れをうつし、海や川に流す、流しびなになったのです」
その後、平安貴族の女の子の人形遊び「雛遊び」とも合わさり、江戸時代に、女の子の誕生を祝って飾る、豪華な段飾りが生まれた。
そして、武家階級から町人、庶民へと広まり、ひな人形や桃の花を飾り、料理やお菓子とともに「ひな祭り」を行う、現在の形になってきた。日本和食卓文化協会代表理事の槻谷順子さんはこう話す。
「ひな祭りで食べられる菱餅の形は、女性や心臓を表すとされています。3色の意味は、邪気を祓うよもぎを使った草餅の緑、清浄の白、桃色は厄除けの力がある桃の花を表すなど、諸説あります。
ちらし寿司と一緒に、はまぐりのお吸い物をいただきますが、これは春の農作業が忙しくなる前に、潮干狩りに行って季節のご馳走を楽しんでいたことの名残りといわれています。はまぐりの殻は、他の貝殻と合わせてもぴったり合わないことから、よい結婚相手が見つかり、一生添い遂げられるようにとの願いも込められています」
※女性セブン2019年1月17・24日号