フェイクニュースはなぜ生まれ、広まってゆくのか。その背景には、それが事実か否かに関わりなく、アクセス数が伸びる扇情的なものだけを求める作り手が存在する。ネットの海に漂うものを恣意的に集めてフェイクニュースを形作るまとめサイトのなかには、その漂うものを生み出すことにまで手を出している者たちがいる。ライターの森鷹久氏が、目先の利益のために元まとめサイト作成人に、フェイクニュースを生み出す方法を聞いた。
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昨年話題になったキーワードの一つに「フェイクニュース」がある。2016年のアメリカ大統領選の頃から指摘されてきたフェイクニュースの存在は、昨年の沖縄県知事選挙をはじめ、国内の選挙の際には必ず取り沙汰される話題となってしまった。特に「フェイクニュース」の温床として指摘されているのがネット上の「まとめサイト」、さらには有象無象の「バイラルメディア」である。
筆者もいくつかのまとめサイトやバイラルメディアの管理人、作成者にコンタクトを取り、それらが「カネのため」に、そして「集客のため」だけに極めて恣意的に作られている「偽ニュースサイト」であることを明かしてきたつもりだが、最近、フェイクニュースの作り方に新たな“手法”が生まれたという。筆者がウェブサイトに発表した記事を無断で動画サイトに転載していた、都内在住の会社員・S氏が明かす。
「まとめやバイラルサイトでは、ネット上の意見を“情報”として報じます。それが事実なのか間違っているのかは問いません。こうした意見がある、としてニュースにするだけで、あくまでも私やサイトの見解ではない、という姿勢です」(S氏)
実はS氏、筆者の記事を丸パクリして動画に転載しただけではなく、筆者の記事に否定的なネット掲示板上の意見だけを抽出し、動画サイト上に記載していた。再生数はわずか数百回ほどで、数円に満たない収入しか得られなかったとするが、筆者がDM(ダイレクトメール)で無断転載を指摘すると、動画を取り下げ謝罪し、今回の取材を受けてくれる運びとなったのだ。
S氏は昨年まで、複数のまとめサイトやバイラルメディアと運営していたが(現在はすべて閉鎖)、ニュースを作る際に、人目を集めそうなキーワードやネタまでも自作自演し「ネットにはこんな声もあります」の部分まで、ねつ造していたというのである。
「ネット上にある意見であればニュースになる、ということは、耳目を引きそうなネタを自ら匿名でネットに書き込めばいいのです。自分でネット掲示板などに書き込んだネタを自分のサイトで取り上げれば、それがニュースになるのです。ただ、長年の掲示板ユーザーには当然見透かされているのですが…」(S氏)