日本の農林水産物の主な輸入相手国をみると、米国1兆7116億円、中国1兆2110億円、タイ5694億円となっている(2017年)。いわば“中国依存”しているわが国だが、中国ではまだまだ食の衛生管理態勢が進んでいないのが現実だ。『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社)の著書があるジャーナリストの奥窪優木さんはこう話す。
「日本の食品会社は『食中毒を出したら会社が潰れる』という高い意識で商品管理を行っていますが、中国の場合は大きな事故を起こしたメーカーも、ほとぼりが冷めると普通に営業を続けるケースが多いのです」
なぜ中国では食品の安全が脅かされるような事件が起こり続けるのだろうか。それには中国という国のいびつな形によるところが大きい。
賄賂や人脈などを重視する官僚主義によって管理の不徹底が見逃されてきたり、本当の意味で不正な食品を監視するメディアがないことも指摘されている。
道徳心が欠如していることも問題だ。社会主義国家であるにもかかわらず、資本主義経済が導入された中国では、拝金主義がはびこる。その上、「お天道様が見ている」というような行動を律する倫理意識も低いため、「儲かればいい」と考えがちなのだ。
中国人でさえも、自国の食品に対して危機感を抱く人が増えているというのは自然な流れだろう。
「もともと中国人は他人を信用しない。食べ物に関しても同じで、農村では農薬除けのために洗濯機で野菜を洗う習慣があるし、飲食店では食器を使う前にお茶で熱湯消毒してからでないと口にしない地域もあります」(日本商社の中国駐在員)
2015年に北京市が1000人の市民を対象に行った食の安全に対する満足度調査では、99.3%の人が「食品安全の知識を求めている」と回答したという。
一方で、富裕層はかなり気を配っていると話すのは、ジャーナリストの富坂聰さんだ。
「非常に二極化しているというのが最近の特徴。安ければ健康はどうでもいいという人もいるが、富裕層向けの高級食材スーパーでは、QRコードを読み取ると、どこでどう作られたかがわかるトレーサビリティーの仕組みが取り入れられていたり、生産した畑の様子を動画で見ることができるものまであります」
日本の安全な食品を取り寄せる中国富裕層も珍しくなくなり、日本人が中国食品を食べ、中国人が日本食品を食べるという逆転現象さえ起きているのだ。
※女性セブン2019年1月31日号