平成のスポーツ名場面を振り返る上では、この「物語」は外せないだろう。
平成10年(1998年)の長野五輪で「日の丸飛行隊」はスキージャンプ団体で金メダルを手にしたが、その糧となったのが、4年前のリレハンメル五輪での団体・銀メダルだ(平成6年=1994年2月23日)。
この大会、日本は1回目に2位につけ、2回目は西方仁也、岡部孝信、葛西紀明がK点越えを連発。アンカーの原田雅彦のジャンプを残し、2位ドイツに大差をつけて首位に立っていた。
105m飛べば金メダルだったが、原田は踏みきりが早く、97m50の大失敗ジャンプ。頭を抱えたままうずくまる原田。しばらく動けなかったが、駆け寄った3人が「銀メダルですよ、凄いじゃないですか」と声を掛け、ようやく立ち上がった。
その時は失敗を認め一切言い訳しなかった原田だが、長野五輪で雪辱後、「仲間には感謝しています。あれがなければ今でもあの場所で頭を抱えていますよ」と安堵の微笑をもらした。(敬称略)
※週刊ポスト2019年2月1日号