平幕が横綱に勝つと「金星」がつき、金星1個で場所ごとに4万円が引退まで支給される。
先ごろ引退会見を行った横綱・稀勢の里が横綱として対戦した平幕力士は、のべ43人。与えた金星は18個で、“配給率”は4割を超える。白鵬が415番中19個(4.5%)、鶴竜は137番中20個(14.5%)だから、並外れた高率である。
これは、人気の高さゆえ懸賞金が集中したことと無関係ではないだろう。今場所初日の稀勢の里戦では55本の懸賞がかけられ、勝った御嶽海は1本につき3万円で、手取り165万円の現金収入を得た。同じ日、白鵬の一番にかかった懸賞は17本、鶴竜はたったの4本だった。
「平幕力士としては、力の衰えた横綱相手に金星と懸賞金を拾える機会をみすみす逃がしたくない。稀勢の里は一部の若手力士の間では“金星ATM”などと揶揄されていた。そうなると、場所前の出稽古などでは花を持たせて、場所に出てくるよう仕向ける力士も出てくる。
場所前に、稀勢の里の“好調ぶり”がやたら報じられる背景には、そうした“八百長稽古”の存在もあるでしょう」(ベテラン記者)
そして本場所になれば、若手ガチンコ力士たちは目の色を変えて稀勢の里に挑んでいった。懸賞が集中する人気横綱の宿命だった。
※週刊ポスト2019年2月1日号