ペナントレースで常に結果を求められる一軍の監督・コーチと、新人選手の育成や調整中のベテランの再起を託される二軍監督では、同じ指導者であっても求められるものが違う。ヤクルト二軍監督・高津臣吾氏の著書『二軍監督の仕事』(光文社新書)がベストセラーになっているのは、ビジネスマンにも通じる若手の育成法、組織の運営法が詰まっているからだ。春季キャンプを目前に控えた高津氏に、二軍監督としての心構えを訊いた。
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二軍監督に就任して3年目のシーズンを迎えました。高卒の選手は、高校までエースで4番だった人が多いですが、プロに入ると一番下っ端です。指導者として「ゼロから教える」という心構えでやっていますが、一番気をつけているのは「野球に関しては叱らない」ということです。
叱って学んでくれればいいと思いがちですが、失敗から成功へ導くためには、何がダメだったのかを説明して、選手からも意見を聞くことで、本人が納得して次のプレーに準備できるほうがいい。技術面で叱るのは二軍コーチに任せていて、僕の役割はヒントを与えることだと思っています。
僕が叱るとしたら、野球以外のことだけ。選手がSNSに書いたことで問題が起きたり、門限を破るなどチームのルールを守らないときは厳しく叱ります。
監督やコーチにアピールするために練習する“見せ練”に励む若手もいますが、僕はそれが一番嫌い。それは前向きな練習とはいえない。常に「うまくなりたい」という欲を持って練習してほしいと話しています。
◆「一軍の要望」が最優先