2003年に貴乃花が引退し、2017年に稀勢の里が昇進するまで、日本出身横綱がいない土俵上を、朝青龍(2010年に引退)、白鵬らモンゴル出身横綱たちが席巻した。
上位陣を海外勢が占める“国際化”に寂しさを覚えるファンは少なくなかっただろう。だからこそ“稀勢の里ブーム”のうねりは大きかった。
初場所でその稀勢の里が引退。それでも、1年半後に迫った東京五輪開会式での、「日本人横綱の土俵入り」を望む声は尽きない。毎場所のように砂かぶり席で土俵上に熱視線を送る俳優の大村崑氏はこう話す。
「“次の横綱”と言えば本来は大関でないといけませんが、高安と豪栄道の両大関はなんとも頼りない。大関まで昇進したところで満足し、綱が取れない力士は多いですが、その典型にも感じます。
稀勢の里の引退は残念ですが、そもそも、横綱として大成するには“いい人”ではダメなんですよ。貴乃花のような変人か、北の湖のように憎たらしくないといけないんです。そして、その強くて憎たらしい横綱を倒す別の横綱がいてこそ土俵は盛り上がるんです。かつての双葉山と男女ノ川(みなのがわ)、大鵬と柏戸といった英雄と悪役、柔と剛といったタイプの違う横綱が対戦する構図が理想ですね。
そういう意味では昨年11月場所で優勝した貴景勝(関脇)や御嶽海(小結)、新入幕ながら存在感を見せた矢後(前頭13)というのはふてぶてしい態度といい、見た目にも“悪役横綱”の素質がありますね。
特に貴景勝には、土俵から突き飛ばした相手にクルリと背を向けて勝ち名乗りを受ける北の湖のような相撲を取る横綱になってほしいものです」
※週刊ポスト2019年2月8日号