「初めて甲子園に出た高校球児の気持ちです」――。主演映画『めんたいぴりり』の初日舞台挨拶で語ったのは博多華丸。もともとはテレビ西日本で放送された連続ドラマだったが、映画として全国公開された気持ちをそう表現したのだ。この作品で華丸はどのような演技を見せたのか――。コラムニストのペリー荻野さんが綴る。
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また泣かされた…これ五度目だよ…と思いながら、映画館を出ることになった。映画『めんたいぴりり』。終戦後、博多中洲に小さな食品店「ふくのや」を開いた夫婦(博多華丸と富田靖子)が苦労の末に明太子を作り出すまでの実話を基にした物語である。
なぜ、五度目かといえば、一度目は、2013年、「福岡初!朝の連続ドラマ」として月曜日から木曜日に放送されたドラマ。福岡で朝ドラ? 放送時間が9時50分から? 主演が華丸!? と驚き三連発の中で見てみたら、これが笑って泣ける名作だった。その後、『めんたいぴりり2』のスペシャル版が放送されて二度目。
さらに博多座で舞台版ができると聞いて、すぐさま福岡に飛んで三度目。DVDが出て、また観て四度目。そして今回の新作映画で五度目。すっかり『めんたいぴりり』マニア状態になってしまった。
そんな中、私はすごいことに気が付いた。それは「役者華丸の演技は、3パターンのみで構成されている」ということである。
たとえば、パターン1は「目をむく」。アイデアを思いついた時、ドキッとしたとき、うれしいときはこれ。パターン2は「歯を見せてニカッとする」とぼけるとき、ごまかすときに有効だ。パターン3は「口をとがらせてしょんぼりする」。悲しいとき、落ち込んだとき、言い訳が見つからないときは、これで決まり。
華丸は、明太子が美味しいと言われれば、喜びに目をむき、妻のへそくりを使い込んだことがバレたときにはニカッとし、うまくいかなかったり、目標を見失いそうになると口をとがらせる。『めんたいぴりり』はこうしてできていたのである。たった3つに泣かされていたとは…と思うと、笑えるが、このわかりやすさこそ、華丸の味。そもそも思い込んだら一直線の「のぼせもん」を小器用に演じたら興ざめだ。むしろ、3つで役をこなしきったところがすごい。華丸に細かい演技は必要なし!!