稀勢の里が引退したいま、次の日本人横綱誕生が望まれているが、どんな力士がふさわしいのか。日本料理界の巨匠・神田川俊郎氏は、まな板の上の魚を一目見れば、活きの良さから味までわかる。今の力士に、「天然育ち」の力を求める。
「横綱の条件は“心・技・体”と言われますが、貴景勝にしても根性だけは横綱級ですが、技と体では程遠い。今の大関連中はアカンし、大関になれる可能性があるのも貴景勝(関脇)のほかには御嶽海(小結)、阿武咲(前頭6)くらい。ドングリの背比べですわなあ。45年ずっと相撲を見てきたけど、こんなこと初めてですよ。
東京五輪に間に合うという条件を外せば、期待するのは元横綱・大鵬の孫の納谷(幕下)です。まだまだ荒削りですが、何にも勝る才能を受け継いでいると思う。あとは、元横綱・琴桜の孫の琴鎌谷(幕下)、元関脇・黒姫山の孫の田中山(三段目)ですかね。もちろん、幕内で実際に取組を見ないとわからないところはありますが。
とにかく、昔のお相撲さんの稽古に比べて、今の力士たちは甘い。魚で言うたら、今のお相撲さんは決まった時間にたっぷりエサが貰える養殖魚ですわ。もうちょっと厳しくやらんとあきません。
モンゴル勢を筆頭に外国出身力士は子供の頃から厳しい競争の中で育ち、異国に飛び込んできたハングリー精神がある。荒波を越えて岩に当たりながら、それでも自分でエサを探さないといけない天然魚のように、逆境に負けない日本出身力士に出てきてもらいたい」
※週刊ポスト2019年2月8日号