アメリカと中国、国際秩序を巡る二つの超大国の覇権争いが激しくなっている。日本は荒波を乗り越えられるか。安全保障の専門家である、米戦略国際問題研究所上級アドバイザーのエドワード・ルトワック氏に聞いた。
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中国がアメリカ主導の既存の国際秩序を壊して、自国の野望をグローバルに展開するという基本戦略はすでに明白となっている。習近平氏が2012年に中国共産党総書記になって以後、それまでの「平和的台頭」という政策を変えてしまった。平和的ではない手段をも使って、それまでの東アジアや西太平洋といった地域での覇権の追求を越えて、地球規模の覇権を戦略目標に据えるようになったのだ。
アメリカ側では、オバマ大統領が国家安全保障担当のスーザン・ライス補佐官の提言で中国の膨張を許容する政策をとってきた。そのことが中国の野心的行動をさらに助長してしまった。だがトランプ政権はその対中許容政策を180度転換し、中国を断固として抑える基本戦略を決めた。だからアメリカの中国への抑止や対決はこれから長く続く。
日本はこの米中対決の中でアメリカの単なる同盟国ではなくパートナーとして中国を抑止することが期待されている。アメリカにとってのパートナーとは、かつてのイギリスがそうだったように、単なる同盟国や友好国以上に、対外戦略の枢要部分で緊密な連携を保ち、協力しあう特別な仲間のことだ。たとえば韓国やオーストラリア、フィリピンなどはアメリカの同盟国だが、日本は特別なパートナーである。
だから日本の対中政策もアメリカとの連携や補完が重要となる。日本は軍事面での行動を取りにくいから、たとえば中国に国境を接するインドやモンゴルや中央アジアの民主主義国に戦略的援助を増やし、それらの国の軍事面をも含む対中国抑止力を強化して、アメリカを助けることが期待される。