国内

恋愛感情がない人物、「アセクシャル」という言葉に希望

「アセクシュアル啓発委員会」のメンバーの中村健さん(撮影/清水通広)

「LGBT」という言葉の普及とともに、テレビや新聞でもセクシャルマイノリティー(セクマイ)にスポットが当たることが増えた。さらには、異性愛や同性愛だけでは語れない多様な恋愛観が存在している。たとえば、他者に性的に惹かれることがない「アセクシャル」と呼ばれる人もいる。

「好きとは何か」をテーマに、昨年、早稲田大学で開かれたトークイベントには、予定を大きく上回る325人が詰めかけた。その主催者の1人である「アセクシュアル啓発委員会」のメンバーで、ユーチューバーとしても活動する中村健さん(22才)は、「自分には恋愛のアンテナがない」と語る。

「いわゆる一般の人には、恋人・家族・友人などの概念があると思うのですが、私は幼い頃から、恋愛という要素がすっぽりと抜け落ちていました。だから恋愛ドラマや映画を見てもまったくリアリティーを感じませんし、“ありえないファンタジー”としか思えない。『ハリー・ポッター』を見ているようなものです」(中村さん)

◆「つきあってほしい」の意味とは…

 東京で生まれ育った中村さんは、周りから「女の子っぽい」と言われる男の子だった。中学時代、仲のいい女友達から「つきあってほしい」と告白されたが、それを「買い物につきあって」と言われたのだと思い込み、OKしたという。

 だが何回か“デート”した後、彼女の方から離れていった。理由がわからず友人に相談すると、「何の進展もないから、うんざりしたんだよ」と言われた。

「その時初めて、“恋愛的”なものがこの世にあると気づいたんです。それを周りの人は認識しているし、自分の身にも降りかかってくるものだとわかった。でも私は“恋愛感情”というのがどういうものなのか理解できなくて、『人を好きになるとキュンとする』とみんなに言われても、“キュン”が何なのかまったくピンときませんでした」(中村さん)

 高校時代、恋愛的な要素がわからず、周りとの温度差を感じていると、「いつかそういう人が現れるよ」と励まされた。

「誰でもいつか恋愛できる」と考える周囲と、そうではない自分の「恋愛」というものへの捉え方に、ますます差を感じる一方だった。

「恋愛の対象が女性ではないのかもしれないと思い、男性と恋愛的な関係になったこともありますが、自分はゲイでもなかった。バイト先の先輩には、『恋愛しないなんて、ロボットみたいだね』と言われたこともあります。自分は人間として欠落しているのだと、不安に襲われるようになりました。それで17才の時、ネットで調べるうち、『アセクシャル』という言葉にたどり着いたんです」(中村さん)

「アセクシャル」は、日本ではまだ認知度が低く、セクマイ当事者たちの間でも知っている人が少ないワードだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

俳優の竹内涼真(左)の妹でタレントのたけうちほのか(右、どちらもHPより)
《竹内涼真の妹》たけうちほのか、バツイチ人気芸人との交際で激減していた「バラエティー出演」“彼氏トークNG”になった切実な理由
NEWSポストセブン
『岡田ゆい』名義で活動し脱税していた長嶋未久氏(Instagramより)
《あられもない姿で2億円荒稼ぎ》脱税で刑事告発された40歳女性コスプレイヤーは“過激配信のパイオニア” 大人向けグッズも使って連日配信
NEWSポストセブン
ご公務と日本赤十字社での仕事を両立されている愛子さま(2024年10月、東京・港区。撮影/JMPA)
愛子さまの新側近は外務省から出向した「国連とのパイプ役」 国連が皇室典範改正を勧告したタイミングで起用、不安解消のサポート役への期待
女性セブン
11月14日に弁護士を通じて勝田州彦・容疑者の最新の肉声を入手した
《公文教室の前で女児を物色した》岡山・兵庫連続女児刺殺犯「勝田州彦」が犯行当日の手口を詳細に告白【“獄中肉声”を独占入手】
週刊ポスト
チョン・ヘイン(左)と坂口健太郎(右)(写真/Getty Images)
【韓国スターの招聘に失敗】チョン・ヘインがTBS大作ドラマへの出演を辞退、企画自体が暗礁に乗り上げる危機 W主演内定の坂口健太郎も困惑
女性セブン
第2次石破内閣でデジタル兼内閣府政務官に就任した岸信千世政務官(時事通信フォト)
《入籍して激怒された》最強の世襲議員・岸信千世氏が「年上のバリキャリ美人妻」と極秘婚で地元後援会が「報告ない」と絶句
NEWSポストセブン
「●」について語った渡邊渚アナ
【大好評エッセイ連載第2回】元フジテレビ渡邊渚アナが明かす「恋も宇宙も一緒だな~と思ったりした出来事」
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さま(時事通信フォト)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン