そこに住んでいる人たちにとっては日常的に見かけたり使ったりする文字なのに、一般には珍しくて難読…そんな“方言のような漢字”が日本全国各地に多数存在する。特に地名や地形に見られることが多いという。ここでは中部地方での“方言漢字”を紹介。早稲田大学社会科学総合学術院教授の笹原宏之さんに、解説してもらった。
■山梨県
読み方→ぬた
湿地帯や沼地の田んぼを表し、イノシシなどが体についた虫や汚れを落とすために泥を浴びる「沼田」の意味。「ぬた」の「た」を「代」で示したとされる。県内では地名として30か所くらい点在する。
■長野県
読み方→たら
植物名。「〈たら〉沢」など、この字を使った名字は長野県出身者に多い。
■新潟県
読み方→ずり
車偏に雪をつけて「そり」と読むのは東北でよく見られる。しかし、「ずり」と読むのは新潟限定。南蒲原郡田上町には「中轌」(なかずり)という地名がある。
■富山県
読み方→くら
神の座という意味。立山信仰の地で、名字にも使われている。以前は岩峅小学校や芦峅寺スキー場などもあった。
■石川県
読み方→ごり
川底の石の下などに休むように隠れている魚。板で仕かけに追い込む「ゴリ押し漁」から、「ゴリ押し」という言葉が生まれたともいわれる。唐揚げや刺身、佃煮などで食され、金沢の郷土料理として愛されている。
■岐阜県
読み方→だ
「飛騨市」などで「騨」を使っている。現在は書きやすさやパソコンなどへの入力のしやすさから、俗字による飛騨が一般的に使われている。
■愛知県
読み方→いり
用水路や水門の意味。江戸幕府などは「圦」の字を使っていたが、尾張藩では木偏の「杁」が用いられていた。幕府からは公用字の「圦」に変えるようにお触れを出されたが、従わなかった。
■三重県
読み方→し
三重県では「四日市」の略称として使われている。ちなみに「三泗」とは、三重郡と四日市市を意味する。
※女性セブン2019年2月14日号