国内

今上天皇が一家で黙とうする「4つの日」、そして次の時代へ

国民の苦しみに心を寄せられてきた(写真/JMPA)

 今上天皇は、1年を通じ、4つの日には必ず家族で黙とうをささげているという。終戦記念日と広島、長崎それぞれの原爆投下の日、そして6月23日の沖縄の戦いの終結の日である。背景には、「国民の苦しみ」に心を寄せ続けることで象徴天皇の在り方を模索した今上天皇の強い思いがあるという。『天皇メッセージ』著者であるノンフィクション作家・矢部宏治氏が綴る。

 * * *
「政治から離れた立場で国民の苦しみに心を寄せたという過去の天皇の話は、象徴という言葉で表すのに最もふさわしいあり方ではないかと思っています。私も日本の皇室のあり方としては、そのようなものでありたいと思っています」

 これは、昭和59年(1984年)、結婚25周年の記者会見でのべられた明仁天皇の言葉です。

「国民の苦しみに心を寄せる」

 明仁天皇と美智子皇后は、おそらくそれを天皇のもっとも重要な仕事と思われているのでしょう。さらにいえばそのなかでも、「声なき人びとの苦しみに寄りそうこと」を最大の責務と考えられているのだと思います。

 それは明仁天皇が「ひめゆりの塔事件」や沖縄戦の悲劇などを通して学ばれた「象徴天皇」という存在のあるべき姿なのでしょう。

「広島、長崎は原爆のため印象的でよく知られていますが、沖縄は逃げ場のない島です。たくさんの人たちが亡くなったのに、本土の人たちの視野から落ちがちです。(略)本土から大勢の人々が訪れますが、沖縄の人々の痛みを分かち合うようになってほしい。それが本土復帰を願った沖縄の人々に対する本土の人々の道であると思います」(1987年8月)

 そうした明仁天皇の姿勢がいかに徹底したものであるかは、次の言葉からもわかります。

「日本ではどうしても記憶しなければならないことが4つあると思います。(終戦記念日と)広島の原爆の日、長崎の原爆の日、そして6月23日の沖縄の戦いの終結の日、この日には黙とうをささげて、いまのようなことを考えています」(1981年8月)

「どうしても腑に落ちないのは、広島の(原爆犠牲者の慰霊式の)時はテレビ中継がありますね。それにあわせて黙とうするわけですが、長崎は中継がないんですね。(略)それから沖縄戦も県では慰霊祭を行なっていますが、それの実況中継はありません。平和を求める日本人の気もちは非常に強いと思うのに、どうして終戦の時と広島の時だけに中継をするのか」(同前)

 明仁天皇自身は、必ずこの4つの日には家族で黙とうをささげ、外出もひかえて静かにすごされているそうです。やむをえず海外を訪問中のときなども、公式日程を少しずらしてもらって、その時間に黙とうされる。そうした思いが世代をこえて、これからも長く受けつがれていくであろうことは、次の徳仁皇太子(浩宮)の言葉からもわかります。

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン